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依存少女  作者: かなん
21/22

二十一 配信しましょ

四人目です。

読んでいただけたら嬉しいです。


「動画配信?」


 礼華との密会の翌日、朝飯という名の昼ご飯を食べていると、半同棲状態の少女が唐突に言ってきた。


「あんたがやるのか?」

「はい。と言っても、友達の生放送にゲスト出演するだけなんですけど」

「ふーん、よく分からんが、元アイドルとかってそういうの大丈夫なのか?」


 利権やら何やら、色々と大変そうだと思って尋ねると、真夜は困ったように笑う。


「えーと、それは問題無いです。私のアイドル関係の名義とか権利は全部礼華さんが持ってるらしいので」

「あー」


 あの超絶過保護な、白髪の女性の顔が頭に浮かぶ。

 確かに礼華ならば、その辺りの事はしっかりしてそうだ。


「友達・・・谷塚じゃねえよな?」

「秋音さんだったらそう言いますよ。あ、無関係では無いですけど」

「ふーん」


 別に彼女の交友関係に興味があるわけでは無い。というより、交友関係を探るとまた新たな地雷を掘り出しそうで怖い。


 話を切り上げて皿を流しに運ぶ。


「何やるんだ?」

「ラジオみたいに話すだけって感じです。まあ、カメラで部屋を写すわけにはいきませんから」

「そうなのか?」


 アイドルや芸人系実況者は顔出しでやってる事が多いような気がするが、やはり年頃の少女は部屋を晒すのは嫌なのだろうか。

 だが、彼女の返答は予想外のものであった。


「え、良いんですか?」

「良いんですかって、そりゃ、配信するあんたやその友達が決める事だろ」


 何か不都合でもあるのだろうか。

 気になるが、今日はそこまで時間があるわけではない。


「ま、好きにやってこいよ。暇があったら動画見るから、チャンネル教えてくれ」

「分かりました、じゃあ、後で動画のリンクを貼っておきます」


 エアコンの効いた部屋から出ると、外は夏の到来を教えるかのような炎天下であった。

 薄手の服をばたつかせて熱を逃しながら、映画館へと向かう。

 

 最近は色んな意味で忙しく、俺の数少ない趣味の映画鑑賞を行えていなかった。

 ネットで映画のラインナップは毎日確認していたが、最近は中々気になるのが多い。


 取り敢えず、直近で観れる戦記物のチケットを購入する。

 


 三本の映画を観てから映画館を出ると、既に日は暮れ始めていた。約七時間ぶりにスマホの電源を入れると、真夜から動画のリンクが送られてきている。

 そのリンク先は、ある芸能人のチャンネルだった。


 それは当然というべきか、元『Six』のメンバーのものだ。


 『Six』のサニー、彼女は長いストレートの茶髪が印象的な天然系少女で、ドラマの女優などが多いユリと違い、バラエティの司会などをやっている事が多い。

 

 確か、この動画投稿サイトチャンネルも何かの番組の企画で作ったもののはずだ。

 数本の動画はどれも一千万回以上再生されており、現在やっている生放送の視聴者数には、なんと三十万人も来ている。


 最近、『Six』というアイドルが身近過ぎて忘れていたが、彼女達の知名度の高さを改めて思い知らされつつ、その生放送を見る事にする。


 すると、そこに居たのは『Six』の二人であった。

 普段、俺の家に居る真夜という少女では無い、『Six』の一員としての少女達だ。

 

 二人は机の上に置かれた飲み物を飲みながら『Six』時代の裏話をしており、時折視聴者達の質問に答えているようだったが、俺はそこにある違和感を覚える。

 

 机やら後ろのクッションやらに見覚えがある。

 ついでに言えば、後ろの観葉植物も見た事があるし、壁紙も見慣れたものだ。

 

「てか、俺の家じゃねーか!」


 ようやく、今朝の真夜との会話の意味が分かった。

 どうりで噛み合わないわけだ。彼女は、俺の家を使うつもりだったから、カメラを使っていいか聞いてきたのだろう・・・分かるわけねえだろ。


 こうなってしまうと家に帰るわけにもいかないし、ここで電話して、生放送の邪魔をするわけにもいかない。

 しばらく考え込んでから、俺はある名案を思いつき、ある人物に電話をかける事にした。



「懐かし!それってあれでしょ!?三回目のライブの!」


 遥の家で勝手に行われている生配信、遂に同時接続者数が五十万人に届いたそれは、まだまだ盛り上がっていく。


「ふふ、はい。汗で化粧崩れないように、沢山ファンデーション使ってたら、最後のハルさんの分が無くなっちゃって」

「だよね、だからハルちゃんはセンターで歌うだけにしてさ・・・ええと、なになに?次はユリちゃんの話題?」


 腰に届くような長い茶髪をアップで纏めた少女、サニーは楽しそうに笑いながら、机の上のノートパソコンの画面を流れるコメントを拾う。

 

「ユリちゃんはキャラ作ってる?・・・無い無い、素であのイケメンっぷりだよ!」

「はい、ふとした時に凄い気遣いが出来る方ですよね」

「やっぱり、彼氏にするならユリちゃんかな〜。プロデューサーの礼華ちゃんも凄いイケメンだけどね」


 サニーが言うと、コメントの流れも更に加速する。

 「来たな、ガチ百合」「礼華さんもテレビ出ないの?」「あ^〜たまらん」


「あはは、そうだね。礼華ちゃんも凄いトーク面白いから、出て欲しいよね」


 と、その辺りで一旦話の流れが途切れる。


「ちょっとマイク切るね!休憩しよ!」


 真夜が新しく飲み物を持って来るために立ち上がると、家のインターホンが鳴らされる。


「あれ?誰か来たね?」

「あ、一ノ瀬さんが帰ってきたかもしれません」

「一ノ瀬さん・・・礼華ちゃんの言ってた人だよね!会うの楽しみだな」


 玄関に行って、ドアを開ける。

 だが、そこに立っていた人物は真夜の予想とは別の人物だった。


「あれ?」

「こんばんわ・・・真夜ちゃん」


 灰色の髪を三つ編みにした少女、秋音は微笑みながら持ってきたお菓子を差し出してきた。


 



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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の家セキュリティガバガバじゃないか ヤバすぎる
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