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依存少女  作者: かなん
14/22

十四 学校案内にトラブル

三人目、その闇の片鱗です。彼女の闇が分かったら、五百万マニーです。

読んでいただけたら、嬉しいです。


 休み時間になるとユリのもとにはクラスの垣根を越えて多くの生徒達が質問しにきていた。

 最初こそ、先生が注意していたものの、ユリが気にしないと言った事で、生徒側の遠慮も無くなったようだ。


「お前は行かないのか?」


 生徒達を眺めながら、空御が尋ねて来る。

 

「行くようなキャラじゃねえだろ」

「それもそうか」

「お前は良いのか?」

「行くようなキャラじゃないんでね」


 俺と同じ言い訳で返してきた彼は、それに、と続ける。


「もう、俺の片割れが飛んでいったからな・・・」


 空御が呆れ顔で見るのは、ユリの周りに集まる人々の中の一人、珠那だ。


「流石」

「嫌味か?ま、あいつから後で色々聞けば良いだろ・・・昨日は、わざわざ質問表まで作らされたんだぜ?」

「はっ、面白いな。何を聞こうと思ったんだ?」

「好きな食べ物とか?」

「それくらいプロフィール読めよ」


 呆れながら言うと、空御はため息混じりに毒づく。


「うるせえ」



 その後、授業が終わると、珠那がユリを連れて俺たちのところへやってきた。


「おー、二人とも、今日はもう授業終わりだろ?もし良かったら、一緒に学校案内しねえか?」

「俺は別に構わんけど・・・ユリさんは良いのか?」


 聞かれると、黒髪の美少女は微笑みながら答える。


「勿論、みんなとは出来るだけ早く仲良くなりたいからね」


 俺は、この後秋音と会う約束をしているが、時間的にはまだ余裕がある。校内案内くらいなら付き合うかと考えていると、ユリから声をかけてきた。


「君は昨日会ったね」

「どうも」

「昨日は失礼な事をしてしまった。この場で謝罪を」


 突然、彼女が昨日の事を謝罪してくる。あの程度の事を気にしていたとは、随分なお人好しだ。


「あー、気にすんな。別に被害を被った訳じゃねえ」

「ふふ、ありがとう・・・そういえば、二人の名前をまだ聞いていなかったね」


 俺達の自己紹介を終えて、四人で校内を歩き回る。

 歩く最中、珠那がユリを質問攻めにしていたが、彼女はきちんと受け答えしていた。

 話を聞く限り、ユリ達は学校が夏休みの間に撮影を行うらしく、今日から夏休みまでの約一週間で、学校に慣れていくようだ。


「一応、高校に籍は入れてるんだけどね。ドラマやコマーシャルの仕事で今日までほとんど通えてないんだ」

「それは大変だなぁ。勉強とかって大丈夫なのな?」

「何とかついていけてるよ。やっぱり、ちゃんと授業を受けてるみんなには遅れてしまうけどね」

「そっか、分かんないことあったら遠慮なく聞いてくれよ。まあ、俺もちょっと勉強は苦手よりだけど」

「ちょっと?」

「空御、余計な事言うなっての」

「んげっ」


 空御に茶々を入れられた珠那が彼の脇腹を抜き手で突っつく。

 それを見たユリが興味深げに言う。


「ふふ、仲が良いんだね?二人は」

「おー、俺と空御は幼馴染だからな。一ノ瀬は中学の頃に知り合ったんだ」

「そうなのかい?」

「ああ、つっても、空御とは家の都合で何度か会った事はあるけどな」

「親同士が仲が良いのかい?」

「まあ、そんなとこだ・・・あ、そこの階段は」

「ん?・・・きゃっ!?」


 ユリが階段に足を掛けた瞬間、階段の縁の滑り止めが剥がれて彼女の身体が後ろに倒れる。


「ッ・・・危ねえ」


 咄嗟にその右腕を掴む。

 

「・・・あ、ありがとう」

「おう」


 ユリの腕を引っ張って、体勢を戻してやるが、手を離した時に彼女が少し顔を顰める。


「ッ・・・」

「あー、すまん。強く握り過ぎた」


 手を離すと、少女の腕には手の形のアザが出来てしまっていた。咄嗟の事とはいえ、力加減が効かなかった。


「・・・フウ・・・フウ・・・」

「おい、あんた、大丈夫か?」

「・・・ンッ、あ、ああ」


 アザをじっと見つめていたユリは、一瞬、やけに色っぽい声を出すが、直ぐに気を取り直して俺に向き直る。


「気にしないでくれ。君が掴んでくれなければ、もっと酷い事になっていただろうからね」

「お、おう」


 先に行っていた二人が戻ってくる。


「大丈夫か?二人とも」

「ナイスキャッチ、遥」

「おう、それと空御、名前は止めろ」

「おっと、すまん」

「ユリ、痛いとこはねえか?」


 珠那に尋ねられると、ユリは身体を軽く動かしてみる。そして、足を動かそうとすると、少し表情を歪めた。


「ッ・・・すまない、脚を少し痛めたみたいだ」

「なっ、大丈夫か!?保健室行くか!?」

「よろしく頼むよ。それと、学校案内はまた今度して貰ってもいいかい?」

「勿論、いつでも言ってくれよな」


 そうして、彼女を保健室に連れて行く。


「ありがとう。三人はもう帰るのかい?」

「おー、俺と空御はこの後、習い事があるんだ」

「一ノ瀬君は?」

「俺も知り合いとの約束がある」

「・・・そうか。じゃあ、今日はお別れだね。また明日」

「おう、また明日な」

「じゃあな」

「バイー」


 学校から出た後、三人と別れて秋音との待ち合わせ場所に向かう。

 時間まではまだ二十分程あったのだが、どういうわけか、店の前には既に人影があった。


「ふふ、こんにちは」


 それは灰色の髪をポニーテールにした少女、秋音だった。

 

 

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