十三 俺の友好関係は狭い
一人目、二人目と比べて三人目は少し、性格を考えづらいです。理由は、特にありませんが。
読んでいただけたら、嬉しいです。
「どうしてここに?」
校門の前で待つ少女、真夜に尋ねる。
「来たら駄目でしたか?」
「いや、別に・・・駄目って訳じゃねえが・・・」
周囲を確認する。
自慢じゃないが、俺の友好関係は恐ろしい程に狭い。
そんな俺が見知らぬ人物と、それも美少女と話していれば、多少は目立つ。
「取り敢えず、歩くか」
「そうですね」
学校を出て、彼女と共に街を歩く。
「で、何で来たんだ?」
「本当に理由はありませんよ。丁度、マンションを出たら、貴方の姿が見えたんです」
「へえ、マンションが近くにあるのか?」
「はい、あれですよ」
真夜の視線を追うと、確かにそれと分かる大きなマンションが見える。
「何でマンションに・・・って、もしかしてCDか?」
「はい、沢山持ってきました」
少女が鞄の中身を見せてくる。
中にはマジックで雑に曲名やアルバム名の書き記された真っ白なディスクが大量にあった。
「・・・ま、ゆっくりと聞く事にするよ」
「そうですね、一緒に聞きましょう」
「あんたは、もう飽きるほど聞いたんじゃないか?」
「いえ、聞いた事があるのは生歌だけですから、CDで聞くのはまた別です。それと、今回は感想も聞けますから」
「はっ、辛口評価でも良いならな・・・あー」
「どうかしましたか?」
「いや・・・」
話していると、毒されたなと感じる時がある。
初めて会った時は、もう少し相手に遠慮して話していた気がするのだが、最近は砕け過ぎだ。
家への道のりを遥が真夜の歩幅に合わせてゆっくりと歩く。
そんな二人が歩いていった後を尾ける影があった。
「・・・やっぱり、ね」
翌日、学校に行くとやけに校内がざわついていた。
鞄を机に投げ捨て、空御に尋ねる。
「何があった?」
「有名人が来るらしいぞ」
「有名人・・・ねえ」
間違いなく、昨日の女性だろう。
『Six』のユリであるという情報はまだ出回ってないようだが。
「それ、いつ言われたんだ?」
「お前が帰った後だ。珠那なんか、昨日から遠足前の子供状態だ」
「おー・・・って、誰が子供だ!ちげーよ、いや、興奮してるのは合ってるけどよ」
ノリツッコミする少女は、スマホを取り出して画面を見せて来る。
「ほら、このニュース!『Six』のユリがここでドラマ撮影するらしいからよ!もしかしたらって思うじゃんか!」
「そういえばお前、『Six』のファンだったな」
「俺達の世代だったら、お前みたいにファンじゃないやつの方が少ないと思うぜ?」
「そうなのか?」
空御の方を向いて尋ねる。
「俺に聞くなよ。俺も別にファンじゃねえんだ・・・けど、まあ、お前みたいに全然知らない奴は珍しいかもな」
「やっぱ、そうだよな・・・いや、別に知らん訳じゃないぜ?ちょっと、俺に関する情報が古いな」
「お前のアップデート情報、分かりにくいんだよ」
いつも通りに話していると、教室のドアが開けられる。
入ってきたのは、見慣れた担任の教師ともう一人。
「失礼します」
生徒達が騒つく。
教師が生徒達に静かにするよう言うが、焼石に水状態だ。
「まず、自己紹介を。私は、ユリ。今日からしばらくこの学校で授業を共に受けさせていただく事になりました。よろしくお願いします」
言いながら、彼女は俺を見つけると、小さくウィンクして来る。昨日少し話しただけなのに、素晴らしいファンサービス精神だなと感心する。
というかーー。
「あいつ、同年代かよ」




