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依存少女  作者: かなん
11/22

十一 遅刻、昼無し、新アイドル

三人目の登場です。

読んでいただけたら、嬉しいです。


 一時間目の終わり、休み時間に教室を出ている生徒達に紛れるようにして教室に入る。

 なんだかんだで遅刻した事のない俺が遅刻したという事で、クラス中から奇異の視線を向けられる。


「珍しいな、遥が遅刻するなんて」

「名前やめろっての」


 揶揄うように言ってくる空御に鞄を投げつける。

 鞄を受け止めた空御は笑いながら、鞄を投げ返してくる。


「相変わらず軽い鞄だな」

「そりゃあ、何も入ってねえからな」

「やば過ぎるだろ。この後、授業三つあるぞ?」

「珠那の馬鹿にも同じ事言えんのかよ」

「その言い訳はレギュレーション違反」


 軽口を叩き合いながら、鞄の中身をひっくり返す。

 出てくるのは筆箱とルーズリーフに、小さな石粒が少々。

 目の前の友人は少し、嫌そうな視線を向けてくるが、毎回俺の名前を呼ぶことに対する、仕返しだ。謝らない。


「・・・少し寝るわ。起こさないでくれ」


 椅子に座りながら、鞄を枕に睡眠体制に入ると、空御が心配そうに尋ねてくる。


「疲れてんな。ラーメン屋で聞きそびれた愚痴関連か?」

「・・・まあ、そうだな」


 最近、どうにも俺の生活ペースは崩されっぱなしだ。

 まあ、アイドルに脅迫された挙句に、同棲されている時点で、ペースなど完全に破壊されているのだが。


 それに加えて、別のアイドルと交際関係になったり、更にそのプロデューサーに来週の夜に呼び出されたり。

 

 一体、どんな因果関係でこんな事態になっているのか。考えるだけで気が重くなるような現状から逃れるように、意識を微睡の中に沈めていった。


 

 休み時間、いつも通り、適当な空き教室に入ってから気づく。


「・・・昼飯忘れた」

「遅刻したからか?」

「イエス」


 普段は通学途中にコンビニか何処かで適当に買ってくるのだが、今朝は遅刻した為に、買い忘れていた。


「俺のパン、いるか?」


 一緒に来たボーイッシュ少女、珠那から惣菜パンを渡されるが、生憎と俺の好きな物じゃない。


「いや、今日は昼飯抜きでいくわ。どうせ、後一時間で帰るし」

「そっか」

「じゃあ、せめて飲み物でも買ってきたらどうだ?」

「あー、それはアリだな。ちょっと行ってくるわ」


 飲み物を買う為に下に降りると、教務室の前に見覚えのない集団がいた。

 見た限り、生徒ではないし、この学校の教師や学外顧問でもない。


 耳を澄ますと、話の内容が途切れ途切れに聞こえてくる。


 「取材・・・ドラマ用・・・」「撮影・・・の為に」「放課後に」


 どうやら、ドラマ撮影の為に校舎を使いたいらしい。

 今朝、真夜と話した内容を思い出す。


 まさか、この学校で例のドラマを撮影する気なのだろうか。


 興味本位で少しその集団に近づいてみると、ちょうどその奥から一人の女性が出てきた。


「あれは・・・」

 

 彼女を見た瞬間、分かった。彼女が椿、『Six』のユリであると。


 真夜や秋音と比べても、一回り以上高い身長に、モデルのようなメリハリの強い、それでいて下品さの無い、均整の取れた体型。

 彼女は、緩いウェーブの掛かった艶のある黒髪を揺らしながら俺の近くに歩いてくる。

 

「おや、生徒さんかな?こんにちは」

「どうも」


 適当に返し、通り過ぎようとすると、突然、後ろからその手を掴まれた。反射的にその手を振り払う。


「・・・何か用があんのか?」


 様々な意味で警戒しながら尋ねると、俺の言葉遣いに周囲の連中の視線が険しくなる。

 だが、当の本人は申し訳なさそうに頭を下げた。


「済まない、失礼だった・・・ただ、君の身体から友人の匂いがしたから」


 彼女の言葉に警戒を強める。

 

「・・・勘違いじゃないのか?」


 できる限り、自然な口調で言う。

 だが、彼女は確信を持って答える。


「私は鼻が良いんだ、間違いない」

「意味分からん・・・」


 毒づくが、逃げられそうに無い。

 彼女が僅かに距離を詰めてくる。それが匂いを確認する為の行為だと、気づいた時には遅かった。


「この匂い、真夜のものだね」

「ッ・・・」


 不味い、どう誤魔化すか、頭の中で策を練る。


「もしかして、君は・・・」

 

 

 


 




 

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― 新着の感想 ―
[一言] 礼華はヒロインじゃないのか、残念。
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