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笑わない巫女少女と笑わせたい鬼5

 

 *

 *


 *



 少女が、妖想郷に来てから2年がたち、

 夏がきた。


 今宵は、妖想郷の中央都で「星黄泉の祭り」が行われる。


「星黄泉の祭り?」


「ああ、そうだ!」


 少女の部屋に入ってきた大鬼が頷く。


「人間たちでは盆?というものだったか?

 その時期と同じような時期に、此方では此方の祭りを行うのだよ。盆の時期には人間界と妖想郷の狭間にある結界が緩みやすいからな!

 黄泉から湧いた悪霊が人間界になだれるやもしれん!それを鎮めるための祭りだ!」


 正しき霊のみが人間界にきちんと帰れるようにという意味合いもある祭りであった。


「まぁ、臆することはない。ただの妖怪がどんちゃん騒ぎをしている祭りにすぎぬ!」


「……、行っても、いいのですか……?」


「むろん!俺はそなたをただ閉じ込められた小鳥にはせぬ!性に合わん!!」


 腕を組んで、ふんぞりかえる大鬼に、撫子が戸惑い、言葉を選びながら口を小さく開ける。


「いえ……そうではなく……。私……」


「や、やっぱり……」


「あの?」


 深いため息を付いた大鬼はその場にしゃがみ込んで、額に手を当てて前髪をぐしゃりと掴んだ。


「……やっぱり、俺と外に出るのは、そなたは嫌なのか?」


 まるで子犬のような瞳で、少女を見上げた。


「……いえ……」


 少女は、顔を


「いえ、そうではなく……。私は結界の核……なのに、行ってもいいん、ですか?」


 赤らめるなんてことは全然なく、寧ろ真面目な顔をして首を傾げた。


 人間界と妖想郷の狭間にある結界は、両者の世界を分けるためにあった。人間は恐れていながら敬っている妖との世界を、撫子のような巫女が核として妖想郷へ渡ることで結界を維持し続けてきた。


「そうですよ!!他の時期の祭りならいざ知らず!!こんな時期に行かなくてもいいでしょう!!?撫子様に何かあればどうなさるんですか!!」


 大鬼の後ろを追いかけてきた白音(しお)が、ぜーはーと息を切らしながら、大鬼に迫り怒鳴り込んだ。


「俺がいる。案ずるでない。それに、核だからといって外に出てはいけない決まりなどは、ない!!そなたは存在しているだけで核なのだからな!」


「いやだもう、このひと……。そのうち側近をやめますからねホント。もー……。はいはい、わかりましたよ!準備させますよ!!紫!紫!撫子様の外出の用意を」



「……出られ、るんだ……」


 少女が意外そうに呟いた。てっきり核は妖怪の中でも最上位の鬼の里に居なくてはいけないと思っていたから。

 いや、外に出るという発想自体が少女にはなかった。


「どんな、ところなんだろう……」


 撫子は、まだ見ぬ場所へ想いを馳せた。


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