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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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福多さんとの再会

荒井さんは郊外の広い土地に大きな家を建てて悠々自適に過ごしているが、可愛がっていたペットの猫・♂3歳のジョンが家から脱走してしまい、ジョンを探し出して欲しいということだった。

迷いペット探しといえば俺ですね、はい。ペット探しばかりとお思いでしょうけれどここ半年は妖怪や妖魔類の依頼が続いたのでこういう依頼は一息つける。とはいえ飼い主からすればペットは家族も同然、いなくなったら一大事なわけだから決して手を抜くつもりはない。

電車に乗って一つ先の駅で降りた。駅の階段を下り、いざ荒井さん宅に向かおうとした時だ。

「あれ、朝舞さんじゃないですか。」

いきなり声をかけられた。振り向くとそこには福多さんがいた。

なんという偶然。俺はかなり驚いた。この人はいろんな意味で印象に残っている。

「福多さん、お久しぶりです。どうしてこんなところにいるんですか。」

「それはこっちのセリフですよ。朝舞さんこそどうして?」

「僕は仕事です。福多さんはこの近くに住んでいるんですか?」

「いいえ、実はここの駅前の会社に面接に来たんですよ。」

「面接?でも福多さんは運が良すぎて悠々自適な生活を送っていると言っていませんでしたか?」

「悠々自適ですよ。別にお金には困ってはいないんですけど働かないと一日が長くて暇で暇で仕方がないんです。だから働こうと思いまして面接に来ました。」

「そうですか・・・。」

やれやれ相変わらずだ、悪気がなく幸せ自慢か。嫌味に聞こえてしまうのは俺の心が穢れてしまったせいだろうか。険悪な気持ちになった俺に向かって福多さんは屈託のない笑顔を浮かべ言った。

「でも僕、面接に受かりそうな気がするんですよ。」

「きっと受かるでしょうね、福多さんの運の良さなら。」

「はい。実は今日出掛ける時に家の近くで犬のウンチを踏んでしまいまして。」

「え?」

福多さんの靴を見た。新品の革靴で高級そうに見える。なんだかデジャブ。そういえば俺もお気に入りのおろしたてのスニーカーで犬のフンを踏んでしまったことがあったなぁ。でも福多さんは少しもショックを受けていないみたいだ。

「ウンチを踏んだ、運を踏んだいう事で良いことがあると思うんです。」

そう答えた福多さんの一点の曇りもない明るい笑顔を見ている内にふと茜さんの言葉を思い出した。運が良いも悪いも本人のとらえ方しだいだというあの言葉。

あぁ、こういうことだったんだな。

「はい。きっと良い結果が出ると思いますよ。」

俺は心からそう思った。

「ありがとうございます。では失礼します。」

福多さんは晴れやかな表情で手を振りながら駅前の大通りに向かって歩き出した。

その場に残された俺は実に清々しい気分だ。心はこの夏空のようにどこまでも突き抜けていく。

「さぁ、行くか。」

意気揚々と一歩を踏み出す。

俺は霊能力者でも超能力者でもないから未来がどうなるかなんて分からない。でも分からないこそ未来に向かって歩いていける。

明日はきっと良いことがあると信じて歩いているのだ。我ながら単純だと思うけどそれでいい。シンプルイズベストだ。

今日は梅雨の合間の貴重な晴れ間。沿道に転がる小石は久しく浴びる陽射しに身も心もさらけだしている。

ここのところ降り続いている雨にさすがに飽きてしまいそうになるけど、その雨だってどこかの国ではどれほど待ち望んでいるものなのか。そう思えば良いか悪いかなんて考え方しだいだ。

俺は空を見上げた。太陽がそこにある。それだけで心が躍った。

「最高の一日だ。」

思いっきり息を吸えばたっぷりの酸素とこの世界に存在しているという幸せが体の隅々まで染みわたっていく。

この幸せがあればこれからどんなことがあっても頑張っていける。

元気がでたぞ。


さぁ仕事だ!




                                   おわり


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