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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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報監督からのメール

 それから一週間が経った。朝舞探偵事務所は相変わらずの忙しさだ。

今日は朝からバタバタしている。一週間前に犬の太郎を探し出した俺の元へまた新たなペット探しの依頼が入った。

「犬・犬・妖怪・妖怪・幽霊・猫・妖怪・犬の次は猫か・・・。そろそろ人間相手の仕事がしたいな。」

次に探さなければならないのは大人の猫。猫の名前は裕次郎。ボス風情で佇む裕次郎の写真を見ながらちょっとため息。伯父はそんな俺の元にやってきて2枚の写真を見せてくれた。一枚の写真にはやばいくらいに派手な化粧を施しているマダム、もう一枚の写真にはこれまたやばいくらいの成金丸出しの男が映っていた。

「太郎、喜べ。裕次郎を探しだしたらその後には念願の人間相手の仕事が待っているぞ。」

「その写真はなんですか。」

「不倫調査だ。奥さんから旦那の不倫を調査して欲しいとの依頼が入った。まったく偶然だが旦那の方からも奥さんの不倫調査の依頼が来ている。要はダブル不倫。お互いがお互いの不倫の証拠を掴んで離婚裁判の時に自分に有利な方向に持っていきたいということだな。で、この写真はその旦那と奥さんだ。まぁ、張り込み頑張ってくれ。」

「はぁ~。なんかドロドロですね。結婚ってなんなんでしょう。」

俺はげんなりした。不倫調査や浮気調査の依頼はここ朝舞にはそんなには舞い込んではこないが忘れた頃にたまにある。その度に結婚とはなんだろうと考えさせられるのだ。

「裕次郎が天使に見えてきたか?まぁ、人間は欲望の生き物だ。しかし欲望があるからこそ人類は文化的にも科学的にも発展を成しえたという側面もあるから否定は出来まい。不倫調査の方は私も補助に入るからよく勉強しておけ。」

「はい、よろしくお願いします。」

俺は不倫調査とかはあまり気乗りはしないがこういう案件になると伯父が妙に張りきるからな。野次馬根性が伯父の血を騒がすのかもしれないがこういう時は頼りになる。普段はデスクで新聞を読むばかりだが。

淳さんは昨日から出張だ。地方の名家の財宝の発掘調査のアドバイザーとしてかり出されている。

茜さんは幽霊アパートの除霊を依頼されていて今まさに出かける準備をしていた。

テュルルルル・・・。

伯父の携帯電話が鳴った。

「もしもし?あ、報監督、お久しぶりです。ご活躍は拝見していますぞ。」

伯父は陽気に話し出した。そういえば報監督と伯父はメル友だったな。

伯父はしばらく親しげに話していたが突然何やら固まった。

「伯父さん?」

伯父は酷く狼狽しているようで口を鯉のようにぱくぱくさせている。

「・・・分かりました。ありがとうございます。報監督の来季の活躍を期待していますよ。はい、では失礼致します。」

伯父は心ここに非ずな面持ちで電話を切った。電話を切っても困惑しているのかあたふたと部屋の中を行ったり来たりしている。

「どうしたんですか、所長。」

さすがに茜さんも心配になったらしい。伯父はぎこちない様子でこちらに向き直った。

「これから秋川しずくがここにくるらしい。」

「「えっ!?」」

俺と茜さんはあまりの急展開に驚愕。

「あの秋川しすくがですか!?」

「そうだ。」

「なんでですか!?」

「一週間前に報監督にしずくになんとか会えないかとメールしただろう。なんとかなったらしい。」

「えええー、マジですか?そんな簡単にスケジュール開けられたんですかね。」

「知らんがな。」

だが、驚く俺の横で茜さんはなにやら手ぐすねを引いている。

「でも丁度良かったわ。私も言いたいことがあったから良い機会よ。」

さすが茜さんは肝が据わっている。大女優相手に喧嘩を売るつもりだ。

一方、所長は虚ろな目でふらふらとコートを羽織った。どうやら出かけるようだ。

「あれ伯父さん、これから秋川しすくが来るんですよ?」

「分かっている。」

「なんで出かけるんですか?せっかくしずくに会えるのに。伯父さん、しずくのファンでしょう。」

「・・・ファンだった、だ。」

「え?」

「いいから。野暮用を思い出したんだ。ちょっと出かけてくる。」

伯父はそれ以上問われることを拒絶するかのようにそそくさと出て行ってしまった。

「伯父さんどうしたのかな。」

俺が不思議そうな顔をしているのを見て、茜さんは俺の肩にぽんと手を置いた。

「所長をそっとしておいてあげて。世の中には好きだからこそ許せることと好きだからこそ許せないことがあるのよ。所長にとっては後者だったというだけのことよ。」

「・・・・。」

そうか・・・。俺は別にしずくのファンでもなんでもなかったからしずくの本性を知ってもショックではなかったけど、いやそれでも多少ショックだったけど伯父はしずくのことが好きだったもんな。その胸中は複雑なものがあるだろう。

「伯父さん、しずくのファンクラブに入るのやめたのかな。」

「・・・あの様子だとそうでしょうね。でもよくそんなこと覚えていたわね。」

「職場にファンクラブの申し込み書を送らせる59歳の伯父の思考回路があまりに衝撃的だったので。」

「それは同感。」


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