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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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封印

超能力と霊気を漂わせ凄味をきかせる淳さんに行く手を阻まれ、後ろには絶対王者の茜さんが控えている。これはまさしく絶体絶命。

なす術を失くしてあたふたする妖怪の背中に人間にとっては意味を持たない言葉が届く。妖怪は何ごとかと驚き振り返るとそこには呪文を唱える茜さんがいた。

その言葉は妖怪にとって意味を持たないなんてとんでもない、意味があり過ぎてとんでもないものだった。

『封印の呪文』

それを悟った妖怪は恐怖で体を強張らせている。もはや逃走する気力も失ったようだ。

「な・・・な・・・」

事の重大性を嫌と言うほど思い知らされて言葉を上手く繋げない妖怪の目の前に、茜さんは玉虫色のガラス玉を差し出した。

幾度となく見たこのガラス玉。テニスボールぐらいの大きさだ。このガラス玉の中にこれからこいつが封印されるのかと思うと恐ろしくなる。

茜さんの呪文はどんどん熱がこもっていく。妖怪はそれに呪縛されたかのように身動き一つとれずにいる。

やがて茜さんの体の周りにぼわっと明かりが灯った。白熱電球のような暖かさ。この色合いはハヤトの妖気を封印する時にも見たし、その他の妖怪の封印の時にも見た。

だが今回はいつもと違った。

突如その暖かな色合いが霧のようになって消えたと思ったらいきなり肌に突き刺さるかのような鋭さを持った霊気が辺りに広がる。それは暴発したかのような勢いを伴っていた。

巨大な霊気は妖怪をあっという間に巻き込む。

「ぐわああああ!!」

妖怪の悲鳴が上がった。それは断末魔。

茜さんの呪文に呼応するかのように玉が揺れ、やがて妖怪はその玉に吸い込まれ始めた。それはまるで超強力な掃除機に吸い取られる布ようにも見える。

「・・・・!!」

妖怪はやがて悲鳴と共に消えた。綺麗さっぱり跡形もなく消えた。

「封印完了。」

茜さんが宣言しこの戦いは何ごともなかったように終わった。


・・・こんな圧倒的でいいんですかね?今さらながら茜さんが怖くなってきた。俺は人間で良かったと心から思う。もし俺が妖怪で茜さんの逆鱗に触れるようなおいたをしたら俺もこの妖怪のように塵のように吸い取られるか、はたまた茜さんに一瞥されただけで石にされてしまうんだ。それで茜さんちの床の間に石像となった俺が飾られ茜さんはそれを眺めながら毎晩満足そうに晩酌をするに違いない。

俺、人間で良かった。

密かに怯える俺の隣で鶫守は茜さんと妖怪の戦いを見届けしきりに感心している。

「そなたは強いのぉ。ここまで強い人間は初めてみたぞ。」

「ありがとうございます。でもあなたの方がずっと強いではないですか。」

茜さんは謙遜するがこの茜さんより強い鶫守ってどうなの?スピード違反ならぬ強さ違反ではないですかね。しかし鶫守はそんなに強いのか。そりゃあ外見は強そうに見えるけど中身がね、気のいいミーハーなおっさんだからいまいちピンとこない。

「いやいや、今回はそなたたちのおかげで助かった。礼をいうぞ。この通り、ありがとう。」

そう言って鶫守は頭を下げた。

茜さんは慌てて鶫守に頭を上げるように言う。頭を上げた鶫守は今度は淳さんを見た。

「そなたのナイトぶりもさすがだったな。そなたの鉄壁な守りがなかったらおなごは闘いに集中できなくてここまで圧倒出来なかったかもしれぬ。信頼がなせる業だ。」

「いやいやそんな・・・。」

淳さんは鶫守に感心されて頭を掻いて照れている。

「太郎と所長とやらもよくやった。あそこで妖術をかけられていたら形勢は逆転していただろうからな。」

「いやぁ、それほどでもないです。」

俺も照れた。しかし伯父は違う。

「はい。同じ過ちを繰り返さないのが私のモットーです。太郎はこの私の血をひいているのでいうならば私の血のおかげですな。」

照れるどころかエヘンと胸を張った。というか俺の手柄を横取りしたぞ。始めに妖怪から視線を逸らしたのは俺なのに。まぁそれも淳さんが視線を合わせるなと忠告してくれたおかげだけどね。

ふと茜さんが持っているガラス玉が視界に入った。ガラス玉の中では禍々しい何かが渦巻いている。この中にあいつが封印されているのだと思うとさむいぼが立つ。

「ところでそのガラス玉どうするんですか。いつも思うんですけどそのガラス玉がもし割れてしまったらどうするんですか?またあいつが出てきてしまうんじゃないですか?」

俺はこれがいつも疑問だった。茜さんはこの玉の中に妖怪や妖魔の妖気、あるいは本体を封印するけどその後どうするんだろう。あるところに奉っていると言っていたけどどこに奉っているんだ?そもそもその玉が割れでもしたらせっかく封印した妖気や妖怪が呼び出て飛びでてジャジャジャジャーンになってしまうのではないかと内心危惧していたのだ。

だが茜さんは俺の危惧なんて心配無用とばかりにクスッと笑った。

「それなら大丈夫よ。この玉は一見ガラス玉に見えるけどガラス玉ではないの。だから象が踏んでも大砲で吹っ飛ばしてもびくともしないわ。」

「そうなんですか?とてもそんな丈夫そうに見えないけど・・・。でもそれを聞いてひとまず安心しました。」

でももう一つの疑問が残っている。どこにその玉を保管するのだろうかということ。どこかに奉ると言っても今まで茜さんが退治してきた妖怪たちが一堂に会して奉られているなんて何気に怖いぞ。なにかのきっかけでその封印が解かれたらどうするんだろう、それこそ妖怪・妖魔の大見本市。そのいずれもが茜さん及び朝舞探偵事務所に恨みを持っているのかと思うとさすがに怖い。怖すぎる。命の危機にも程がある。


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