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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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秋川しずくの本性

秋川しずくへの怒りで握りしめた拳が震えてくる。

確かにこの日に自分が死ぬと分かれば誰だって恐ろしいだろう、だから死にたくなくて藁をもすがる気持ちでこの妖怪の所へ行ったというのは分からなくもない。

それに未来を知り、自分が望んでいたものが見事に実現されていたらそれを維持しようとするのも、失いたくないと思うのも分かる。

でもそのために鶫守の命を犠牲にしようとするなんて。

そもそも夜鶫の鏡を見るという事は死を覚悟するということなんだろう?鏡を見れば死ぬと分かっていてそれでも見たのに、いざ死という現実を見せつけられたら途端に考えを変え、他人の命を代償にしてまで自分の欲望を選ぶなんて。

鶫守のことを敵に売り飛ばした秋川しずくのことが許せなかった。

でもここでふと思った。

俺だったらどうするだろう・・・。もし俺が秋川しずくの立場だったら誰かの命を犠牲にしてでも望んだ未来を手に入れたいと思わないだろうか。

もし、夜鶫の鏡を見た時に自分が欲してやまない未来が見えたら・・・。

俺はふいに自分の本性を見たような気がして今度は別の意味で体が震えた。

俺だったらどうする・・・。

思わず鶫守を見た。鶫守と出会ってから半日しか経っていないのに随分と鶫守と親しくなったような気がする。鶫守はテレビ大好きっ子で、人をもてなすのが大好きで家事が好きで何かとおせっかいやきで、しかも俺をヘタレなみなしごハッチ扱いしてからかう。

でも鶫守は憎めない。それどころか気のいいおっさんぶりがかなり好きだ。

そして思った。

俺は秋川しずくと同じ真似は出来ない。自分の欲望の為に鶫守の命を犠牲には出来ない。

いや、鶫守だからではなく誰の命であろうとも、だ。

一人で悩み、結論づけた時だ。

鶫守は厳しい視線を妖怪に向け問うた。

「貴様はなぜ夜鶫の鏡を欲しているのだ。」

すると妖怪はなんだそんなことも分からないのかと馬鹿にしたような面持ちで鶫守を見下ろし

「その方が手っ取り早いからに決まっているだろう。」

「手っ取り早い?」

「そうだ。未来を知りたがる人間は五万といる。だがその多くの人間は夜鶫の鏡を見ようとはしない。鏡をみたら一年後には死んでしまうということが分かっているからだ。だから俺は思った、この俺様がその縛りをなくしてやろうとな。」

「不老不死の薬を人間に売りつけようと企んでいるのね。」

茜さんが眉を顰めて呟いた。

「あぁそうさ。不老不死になれば例え鏡を見たとしても死ぬことはない。だから俺が鏡を持てば未来見たさに人間どもが俺の所へ殺到するだろう。愚かな人間どもは死にたくないからと不老不死の薬を求めてくる。そこで俺は人間どもの体の一部を代価にして薬を売りつける。馬鹿な人間どもは命欲しさに手足の一本、目玉の二個ぐらい平気で差し出すさ。おかげで俺はコレクションをどんどん増やせるというわけだ。実に合理的で無駄がないだろう?今まではどこからか俺のことを嗅ぎつけた奴らがごく稀にやってくるだけだった。たまに人里に下りて目を付けた人間どもを襲うこともやったがこれからはそんな面倒くさいこともしなくて済む。なんせ夜鶫の鏡目当てに獲物が向こうからやってくるんだからな。これほど愉快なことはないだろう。まったく飛んで火にいる夏の虫とはまさにこのことだ!」

そう言い放ち妖怪は高らかに笑った。まるで悪びれることもなく邪悪におぞましく笑った。

その下卑た顔を見ていると心の底から寒気がしてくる。



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