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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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御札コレクター

意外な展開に俺はかえって焦り始めた。こんな言い訳を信じるのか?でも信じてくれたなら乗るしかない。

「はい。御札を見るとテンションが上がってしまいまして。触らずにはいられなくなるんです。」

「そうか。だが本来御札というのは非常に大切なものだ。ご利益のあるものがそこには書いてある。何かを祈ったり、時には封印に使われるものだ。たやすく触れていいものではないぞ。」

鶫守は親切に御札の説明までしてくれた。あれ、もしかして茜さんたちが言っていたとおり弱い者には優しいというやつ?

「はい、以後気を付けます。」

とりあえずほっとした。

「そなたは道に迷ったと言っていたな。どこへ行きたいのだ。案内するぞ。」

「え・・・。」

まさかあなたの家に行こうとしていたのだとは言えず。

「どこか行きたいとかあてはなくて。僕は都会育ちなのであぜ道が珍しくてふらふらとここらへんを散歩していたら道に迷ってしまいまして・・・。そしたら御札を見つけまして気が付いたら手を伸ばしていまして・・・。」

言い訳が下手過ぎるにもほどがあるがこんな状況下では上手い言い訳も見つからない。

「そうか、では歩き疲れただろう?わしの家で少し休んでいきなさい。お茶でもだそう。なんなら泊まっていくか?」

いやあぁあぁああ、心の中で絶叫。小さな親切大きなお世話!!勘弁してくれ!!

「で、でもご迷惑になるといけないので帰ります。」

「帰るといってももうバスはないぞ。一時間前に出たバスが最終だ。ここは田舎だからな。一日三本だ。今度くる時はバスの時刻表をちゃんと見た方がいいぞ。それともどこか泊まるあてはあるのか?」

いろんな情報をくれるのはありがたいが今はありがたくない。しかし焦りまくっている俺を見ても鶫守は全然気にしていない様子。

「・・・いいえ、ないです。」

「ではわしの家に来なさい。」

しまった!!他に泊まるあてはあると嘘をつけば良かった!!俺はなんて馬鹿正直なんだ!俺のばかばかばか!

しかし時すでに遅し。

「はい・・・お邪魔します。」

「うむ。了解した。」

俺は半ば強引に鶫守の家に連れて行かれることになった。どうしよう、助けて茜さん!!淳さん!!



冬の日没は早い。東の地上付近の空に夕暮れがやってきた気配がする。ここに街燈などあるはずがなく、あるのは田んぼの刈り取り面を撫でていく冷たい風だけ。

「まだ結界が解けないわ。太郎ちゃんどうしたのかしら。」

茜が不安そうに呟いた。淳も何度も時計を見て太郎が結界を解くのを待っていたが、さすがにここまで時間がかかっているとたまらなく不安になった。

「まさか鶫守に捕まってしまったとか・・・。」

考えたくもないが可能性はゼロではない。いや、ゼロではないなんて希望的観測だ。捕まった可能性の方が高い。

「やっぱり太郎君一人で行かせたのはまずかったか。」

今頃激しく後悔しても遅い。こうして時間だけが無駄に過ぎていく。それなのに何も出来ない自分が不甲斐なく思えて仕方がなかった。

「でも鶫守は弱い人間には手を出さないというのがもっぱらの噂よ。だから大丈夫だと思うのだけど。」

そう言いながらも茜も不安でたまらない。だからこそ楽観的に構えることによってその不安を少しでも和らげようとした。

「でもそれはあくまでも噂だよね?もし違ったら・・・。」

「淳君!めったなこと言わないで!」

茜が強い眼差しで淳を責めた。

「そうだな、ごめん。僕たちが太郎君を信じなければな。」

淳は茜に言われ、弱気になりそうな心を奮い立たせた。

しかし今すぐにでも太郎の元に駆けつけたいのが本音で。何度も目の前の結界に手をのばそうとしたがその度に身を切るような思いでやめた。仮に結界に触れて自分たちが近くにいることを鶫守に知られたら太郎の身が危ないと考えたからだ。

「クソっ!中へ入れたらいいのに!!」

淳は忌々しげに目の前の結界を睨む。

「この結界さえ解けたら・・・。せめて中の様子を見てきてくれる人がいたらいいのだけど・・・。誰かいないかしら。」

茜が苦渋に満ちた表情でぼそっと呟いた。

「見てきてくれるって誰が?」

「太郎ちゃんに負けず劣らずなぐらい霊感がない人。要はこの結界のセンサーに引っ掛からない人ね。」

二人は逡巡し始めた。霊感が弱く、多少危険な目に合わせても大丈夫な人。茜と淳が考えること15秒、そんな人物が身近にいることを思い出した。

「「所長!!」」

二人の声が重なった。


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