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本条都九子は魔導書をつくる  作者: 筧伊瀬
グリモアツクール編
16/31

15.おかいものしましょ

 センさんが帰ってきたタイミングで、楽しいお昼ご飯タイムである。

 一時的「休憩中」の看板と布をかけてお店を閉めて、馬車の荷台の座れるところに移動する。


 センさんが買ってきてくれたのは焼き鳥肉のホットサンドだった。

 ああっ、おにくだ、おにく! ツッコ、おにく、だぁいすき!

 内心では大興奮だが表向きはいたってクール&クーラー&クーレストである。

 私は一口一口ゆっくりと肉の味を噛み締めながら、センさんが出掛けていた間のことをかくかくしかじかと話した。

 改めて順序だてて話してみて、私、かなりやらかしたなぁ。ツッコ反省。


「すみません、あんまり鬱陶しいんでついカッとなっちゃったところはなきにしもあらずです……反省します……」

「そうですか……でも、今回は仕方ないと思います。嫌な思いをさせてしまってすみませんでした」

「本当に大丈夫ですか? 私、お店の営業の邪魔したんじゃないですか?」

「……実のところ、ですが……」


 センさんは周囲に気を配りながら、さりげなく口元を隠して私の耳元に顔を寄せる。


「あの女性たちには少し辟易していたのです。毎週いらしてくれるんですが、店の前に陣取って他のお客様の買い物の邪魔をしたり、お茶会や観劇の誘いなどもしつこくて……。何度断っても毎週毎週いらっしゃるので、どうしたものかと思っていたところです……ないしょですよ?」


 センさんは恥ずかしそうにはにかみながら、人差し指を立てて唇に当てる、いわゆる『ないしょのしー』のポーズをした。

 そのポーズ、この世界でも通じるやつなんですね。不意打ちでかわいいです。


「だから、気にしないでください。幸い私の薬を気に入ってくれている方はたくさんいますから、少しくらい評判が悪くなっても大丈夫ですよ」


 そういってセンさんは大きく口を開けて、はぐ! っとホットサンドを頬張った。

 あ、やば、これあと3口くらいで食べ終わるやつじゃん! 私も遅れないように食べないと!


「さ、食べ終わったらお店を開いて、少し売ったら早めに店仕舞いしてしまいましょう。あなたの服も食器も寝具も、ついでに食料も買い足したいです」

「ふぁい! たくさん働きます!」


 食べ終わった紙袋を丸めてゴミ袋に入れて、私とセンさんはお店へ戻った。

 お嬢様たちが高額な商品を買ってくれたおかげで──押し付けたともいうが──、今日はいつもより売上がいいそうだ。

 早く店仕舞いできそうでよかったです、とセンさんは笑ってくれた。


***


 宣言通り早くお店を終わらせて、私とセンさんは市場へ繰り出した。ちらほらと私たちのように早く店仕舞いしたところもあるようだが、買い物はおおむね済ませられた。平皿、深皿、コップ、フォークとナイフとスプーン、おはし……おはし?


「うわぁ……お箸がある……どういうことだってばよ」


 世界観に合わないとはこのことだ。

 誰だよ、このヨーロッパ風ファンタジー世界にいきなり和物ぶち込んだやつは!


(い、いや待て、待つんだ本条都九子、はやとちりの可能性もある。もしかしたらチャイナ式ハシほうかもしれない)


 チャイナ式ハシってなんだ、結局ハシじゃないのか、というツッコミは誰からも貰えなかった。


「ツッコ、ハシが珍しいのですか? 確かに、コメ専用食卓用具なんて珍しいですよね。私もこの街にくるまで見たことがなかったです」

「米!? 米ってあの米!?」

「ええと、ツッコが知っているコメと私が知っているコメとが一緒かはわかりませんが」


 あれですよ、とセンさんがひとつの店を指し示す。大箱のなかにこんもりと盛られた、あの白く美しいニホンの宝。


「oh……おこーめ……」

「作るのにも食するのにもとても手間がかかる食べ物ですが、おいしいですよね。私もすきです。今日はパンだけじゃなくて、コメも買っていきましょうか」

「まじで!? やったーーー!」


 お米おいしい! 日本の米は世界一!

 センさんはお店で米を一袋買い、あとで馬車のなかまで運んでほしいと頼んで再び買い物を再開。


 毛布は冬用と夏用をそれぞれ1枚、シーツも換えのものが必要だから2枚、上着の羽織りにブラウスにスカートと靴下も数枚。か、かなりてんこ盛りになってきたなぁ。

 1つ1つ、そう安いものでもないだろうに、心から申し訳ない気持ちになる。

 さすがに多いと遠慮しても、センさんはニコニコしながら「これまで使う機会もあまりなくて、貯金はありますから」と返されるし、すいまセンさん、ほんとうにありがとう。頑張って恩返しします。

 ……ただ、買ってもらった中には、アレがない。女子として生活するために、必ず必要な、アレが。ついでにアレやらコレやらの話もしたいんだが、センさんで分かるかな……。


「センさん……あの、言いにくいんですが」

「はい、なんですか?」

「女性用の下着……下履き? は、どこで買えますか?」

「したっ!?!!!」


 ああ、固まっちゃった。

 センさんすみません、悪気はないんですよ。


「お店の場所さえ教えてくれれば、あとはひとりで入りますから……お金もネコババ……じゃ、分からないか……えーと、盗んだりしませんし」

「ぬ、ぬすむなどと! そんな心配はししし、してませんが……!」


 こほん、と咳払いし、不自然に手を口元に持って行く。真っ赤になっている顔を隠したいのかも知れませんが、全然隠せてないッス。


「え、えーと……その品物なら、中央商会のミンティアさんに訪ねてみるとよいかと……」


 ミンティア? ミント味のスカッとするシュガーレスタブレットかな?


「サノコノ皇国中央商会の幹部で、この街の商会を取り仕切ってる女性です。この街の店のことならなんでもご存知なので、きっと良い店を紹介してくれますよ」


なんで箸とかお米とかあるの!?ご都合主義すぎ!!というツッコミについて。

ヒント1:2話目と8話でジュエルさまが言ってた「髪の色は黒、目の色も黒。奇妙な身なりで、臭い、ひとの子ども」。

ヒント2:この街の名前は「ジュウベエ」

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