〜桜並木編5〜
「さてと、ここで得られる情報はこれくらいだな」
「情報って、もしかして情報収集してるのか? 何の
為に」
純粋な疑問だ。
なぜならオレ達の仕事は怨霊を捕縛して、裁きの場へと送ることだ。
怨霊の情報などは必要ない。
必要あるとすれば、裁きを与える側の奴らだ。
「何の為にって、敵のことは知っておいた方がいいだ
ろ? 奴の居場所が分かっているならともかく、奴
を探さなきゃいけないなら探すついでに情報も集め
た方が効率いいと思わねぇか?」
「それは、有利になる為に敵を知るってことか? で
も、今までを見てきてもそんな弱点とか結界内にな
くないか?」
そう、結界はあくまで記憶や思い出を元に作られた怨霊が力を最大限に発揮できる場。
だからそんな場所に怨霊の弱点の情報があるとは思えない。
「有利になる為って……そんな都合のいいもの落ちて
るわけねぇだろ。ボクはあくまで怨霊の生前につい
て詳しく知れればいいと思ってるだけ」
「だからそんな必要。生前のことなんて倒す上で関係
ないだろ?」
「……また今度ちゃんと話すわ。ここで押し問答して
るのが一番無駄だろ。とりあえず付き合えバカ」
「だからそのバカって言うのやめろって! 分かっ
た。今回は付き合うけどちゃんと説明してもらうか
らな!」
倒すことに情報なんて必要ない。
知ってどうする?
怨霊の生前を知ったところでオレ達は消えない程度に倒して、捕まえるしかできないんだ。
生前なんて知るだけ無駄……だろ?
「とりあえず、外行くぞ。怨霊がここの生徒だったな
ら、教室とか見てぇし、もしここにいるなら奴も探
したいしな」
「ああ」
そうして、保健室を後にし、学校探索を再開した。
しかし一階はほとんど見て回ったものの、これといった手がかりが得られることはなかった……。
「手がかりなかったな。というか、一階は保健室以
外、曖昧じゃなかったか?」
「それ自体が手がかりだろ」
「え?」
「この手がかりを示すのは以下の三つだ。一つ目が保
健室が細部まで再現されていたこと。二つ目が一階
にあったのは保健室以外にはトイレと一年生の教室
ということ。三つ目が保健室以外の部屋はどれもぼ
んやりとしていたこと」
「はぁ」
それがなんだと言うのだ。
一体何の手がかりなのかオレには全く見当がつかない。
「いいか。まず二つ目からだ。一階にある部屋が一年
生の教室ということは、この学校に通ってた奴はど
れか一つの教室の生徒になったことあるってことだ
ろ? 六年生の教室とかなら転校したり、その前に
死んじまったりで見たことない奴がいるかもだけど
な」
そうか。怨霊の結界内に再現されたということは十中八九生前に通っていた学校。
死んだタイミングがいつであれ、一年生の教室には必ず通ったことがあるということか。
「そして、そこに一つ目と三つ目の事実を当てはめ
る。おかしいことがあるだろう?」
「……通っていたはずの教室よりも鮮明な保健室。つ
まりそれだけ保健室が思い出深いってことか?」
「思い出深いのも確かだろうな。でも、この結界をつ
くった怨霊は教室を再現できるほど教室の記憶はな
いが、保健室は再現できるほど保健室の記憶はある
ってことなんだよ」
「それって……教室より、保健室にいた時間が長かっ
たってことか?」
「たぶんな。まあ、理由は体が弱かったのか、小学一
年生にしてサボリ魔だったのか、違う理由があるの
か分からないけどな」
すごいな。
こいつは探索しながらそれだけ考えていたのか。
いや、待て、どうしてこいつはここが小学校だと分かったんだ?
「なあ、なんで小学生一年なんだよ。もしかしたら中
学一年かもしれないだろ?」
「最初に通った下駄箱に四年って文字があったんだ
よ。ちゃんと見とけ。この国で四年生まであるのは
小学校と大学だけだ。でも大学って感じじゃねぇ
し、そしたら小学校しかねぇだろ」
「なるほど」
と、オレが彼の推理に納得した時だった。
オレ達が今いる階段の登り口。
つまり二階へ上がる階段の上の方から声が聞こえてきたのだ。
「二人もそこまでたどり着いたか」
第5話です!今回は少ないですが、個人的に新たな人物が登場したところで切るというのをやってみたかったのでこの長さになりました。次回からはもう少し文字数を増やして投稿できるようにしたいなと思ってます!
これからもよろしくおねがいします。