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彼が為の物語  作者: 吏人
第1章
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第2話 神槍ロンゴミニアド



開始早々、様々な事実にぶち当たってしまったレイだったがそれは一旦置いておき、此処から脱出すべく行動を始める。



「『地形把握』!」



使用したのは半径5km圏内の地形を把握できる、地形把握というスキルであった。


レイの目的はこれの四方が壁で囲われた部屋が何処かへと繋がらないかを確かめる事だ。


最悪、繋がっていなくても一番近い場所へと掘り進めば此処から脱出出来るかもなー、という考えでもある。



「……うっわ、まじか」



が、現実はレイの妄想を悉く打ち砕いた。


地形把握によって判明した事実はたった一つ。


5km圏内に通路は何処にも存在しないという事だった。



☆☆☆



ある程度発狂した後にレイがとった行動は、冷静ならば鼻で笑ってしまう程の呆れたものであった。



「この、なんとか武具召喚でこの壁掘っちゃえばいいんでない?」



自分が持つスキルが粗方通用しないと理解したレイは、概要すらさっぱり分からないスキルに頼ろうとしたのだ。


実際、他の誰かがこの場に居たのなら確実に止めていただろう。


正体不明のスキルというものはあまりにも不可解で危険過ぎるのだ。


だが、此処から出ることの出来ない恐怖と焦りから、レイはそんな事など微塵も考えなかった。


そして、壁へと近付き正体不明のスキルを発動させる。



「『武具召喚』!!」



それは、余りにも無謀で、余りにも── 最適な手段であった。


レイがスキルを行使した瞬間、目の前に光り輝く魔法陣が現れそこから一本の槍が召喚される。



それは、どちらかと言えばランスのような形をした白い槍であった。



レイはこの槍が召喚された瞬間、このスキルを行使した事を後悔する。


それ程迄にこの白い槍には力が込められていた。


しかし、どうせ召喚したのだからとレイはその槍を手に取る。


すると、頭の中に声が響く。





──我が名は、神槍ロンゴミニアド。



──最果てにて、光り輝くもの。



──汝、我が力を求めるか。



──求めるのならば、対価を示せ。





そう言い終わるや否や、返事すらしていないレイの体から無理矢理魔力が抜き出される。


危機感知が発動するも体は既に囚われており、自らの意思で動くことは叶わない。



──体がスキルに動かされる。



それは、レイがそのスキルを扱う資格が無いことを暗に示していた。


そして、レイの全魔力を吸ったロンゴミニアドの力が解放される。


レイの体は勝手に左足を前へ、右腕を後ろへと捻り投擲のフォームを作り出す。


そして、口は自ら言霊を吟じる。




──我が力、我が意を持って此処に力を行使する。



──我が名を叫べ。



──終焉を告げろ。



──今こそ穿て。



「神槍ロンゴミニアドっ!!!」



その言葉と同時に槍が壁へ向かって放たれる。


壁を。否、大地を抉ってその槍は突き進む。


我が前に存在するものなど無いというように、全てを穿ちながら道を作る。



ドガァアン!! という何かを突き破るような音とウガァァァア! という何かの絶叫ような声と共に、レイは魔力の全損で気を失った。



☆☆☆



「なんじゃこりゃ……」



目を覚ますと、レイの目に飛び込んできたものは壁だったものの残骸だった。


そこには壁であった気配は微塵も無く、人が立って歩ける程の一筋の通路が出来上がっていた。


そしてその通路からは日光(・・)が射し込んでいた。


レイにとってその事実は喜ばしいものであった。


「よっしゃぁあ!!」


レイは思わず喜びの歓声を上げる。


これで外に出られる、と。


しかしそこでレイは新たな問題に直面する。



──あれ、僕なんも武器持ってなくね?



と。



レイは記憶を失った今でも、ある程度常識的な事は覚えている。


故に、武器となる物が無い事がこの世界で生き延びて行く大きな障害になる事をよく知っていた。


この世界には魔物なる怪物が存在している。


魔物とは体内に魔石内包した生物だ。


その力は動物とは比べものにならない。


もし動物と魔物が争ったならば、魔物が圧倒的な勝利を収めるだろう。


その魔物が街の外にはウヨウヨと存在するのだ。


武器も無しに外を出歩くことなど有り得ない。


もちろん、武器が有っても完全に安全という訳ではないのだが。


レイは武器を所持していない現状を打開する為に頭を捻る。



「うーん……あっ。 ステータス!」



そして、何かを収納するスキルを自分が使える事を思い出しその確認の為にステータスを呼び出す。



──その行動が、自らに衝撃を与える事になるとは知らずに。



「はっ?」



□□□



レイ (人間)


Lv 42


HP 1500/1500

MP 12/1410


ATK 1510

VIT 1371

DEF 1392

INT 1490

AGL 1533

DEX 1992

MND 1416

LUK 142


〈ユニークスキル〉

「*族 Lv-」 「地形把握 Lv1」 「空の王者 Lv1」 「空間魔法 Lv1」「アイテムボックス Lv1」 「経験値倍増 Lv-」 「翼 Lv1」「**武具召喚 Lv1」


〈パッシブスキル〉

「暗視 Lv-」 「剣術 Lv1」 「槍術 Lv3」 「全耐性 Lv1」 「危機感知 Lv1」


〈スキル〉

「原始魔法 Lv1」 「威圧 Lv1」 「鑑定 Lv1」


〈称号〉

「試練を受けし者」 「神槍の担い手」 「竜を討伐せし者」



□□□




その目に映し出されるのは異常な程高まったステータス。



「なんでこんなにレベルが……? ま、まさか」



そしてそれは、先程自分が何かを殺したという単純な事実を示していた。


それを理解した途端、レイの顔色が明らかに青くなっていく。


自分の知らない内に命を奪ったという事。


またそれが魔物ではなく人の命かもしれないという事。


レイは人の命を奪ったかもしれないという不安感に襲われ、震える足を奮い立たせながら、ステータスの内容も見ずに走り出す。


しっかりとステータスを見ていれば、殺したのは魔物だと明らかに告げているのだが。


しかも、何の種族のものかまでも。


以前からこの男は少し抜けているのだ。


レイは全速力で自ら作り出した通路を走り抜けて行く。


その速度は常人ならば目を見張る程のものであった。


故に、5分とかからずにレイはその通路を走り遂げる。


レイは5kmちょっとだろうと認識しているが、実際には10km程の距離であった。


10kmを5分で走り遂げるのは、もはや人間ではない。


もう別種の何かであろう。


そしてまた、神槍の威力の高さをも物語っている。


レイが必死で走り抜けた先に待っていたのは竜と思われる残骸と、それを必死に漁っている小さな人の姿であった。









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