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続き
前回の続き
彼は、囁く。
ある場所へ行こうか、と。
私は、頷き黙って、
少し後ろについて歩く。
「どうして行こうと思ったの?」
「…いいって思ったから」
私の返事に、
彼はまた少し微笑んだ。
時が経つのを忘れてしまうくらい、
思いを重ね合わせた。
目を閉じている時の
彼のあの顔がたまらなく美しくて、
私は目を開けてその表情を見つめていた。
ゆったりと過ごす時間は、
あっという間で、
帰る時間が迫る。
もっと一緒にいたいのに、
時間は待ってくれない。
帰りの車内で、
隣にいる彼を見つめる。
彼は、私の視線に気付き横目で見ている。
恥ずかしくなり、私は笑い返す。
彼は、ん?と言ったような表情をして、
黙って前を見つめる。
完全に私の片想いだと知りながら、
また会いたいなあと願う私がいた。
帰りに、何度も振り返り、
お互い手を振る。
また会いたいと、
1人願いながら。
次回へ続く