5・聖教会はスルーだ!
その後はサクサク進んだ。
額に聖痕が浮き出た私に家族はビックリ大仰天。
領主の父が町の教会に通達し、一週間後には王都の聖教会本部から大司教様が自ら私を迎えに来た。
前回と全く同じだ。
この大司教メオウ様は90歳のとっても優しいおじいちゃん。
突然聖女となって戸惑い不安がる私に何かと気を配ってくれてよく頭を撫でてくれたっけ。聖女となったおかげで回復魔法が使えるようになった私の魔法の師匠でもある。
残念ながらこの半年後に高齢による病が原因で亡くなってしまうのだけれど。
でも2回目だから回復魔法は使用可能なランクのものは全てマスターしているし、聖女としての最低限必要なスキルは身についている。聖教会本部の歴史やしきたり、更には王宮での礼儀作法や重要貴族の名前とか。ホンット前回覚えるの大変だったんだから!
しかも聖女として上座に座らされ丁寧に扱われはするけど、影ではたかだか田舎領主の小娘が、と侮辱されたり見えない処で嫌がらせされたりもした。
だから勇者を送り出した後は王宮は勿論のこと、気位だけは高い中流貴族の三男以下が役職を占める聖教会本部も居心地が悪くって。大司教様が亡くなったのを機に辺境の教会を巡る事にしたんだ。
そもそも前回も今回もお掃除大好きな私にお掃除させてくれなかったんだよ!聖女様のする事ではありません!って何で聖女がお掃除しちゃいけないんだよー!!
私の楽しみを全否定するなぞ許ッさーーん!!
この魔法の竹ボウキも何度捨てられそうになった事か。
まあ、ただの竹ボウキって事にしてるから無理ないけどね。
だって魔法の竹ボウキって言ったら絶対お掃除に使わせてもらえなくなりそうなんだもん!
とにかく今回は聖教会は全てスルー。
「私は女神様に全て教えて頂きました。聖教会の教えは必要ありません。」
それでもなお、政治的駆け引きなのか私を留め置こうとする聖教会の司祭達にニッコリ笑顔で言ってやった。
「女神様以上の教えをあなた方が?聖女である私に?授けようと言うのですか?」
よしよし。ぐうの音も出なくなったやつらに大司教様が口角を上げて“ざまあ”、という顔をした。
“大司教なんぞ都合のいいお飾りでわしの言う事なんぞ聞きゃあしない、昔はこんなんじゃなかったんじゃがなぁ。”と前回寂しく言ってたもんね。
面倒くさがって聖女教育をスルーした事で、“女神の特別の寵愛を受けし奇跡の聖女”と呼ばれている事態に気付いていないミルフェリア。




