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12・罪深きエルデスの末裔


そしてその半年後に事件は起きた。


その日立ち寄った港町の大きな広場でたくさんの町民が集うお祭りが催されてたんだ。勇者パーティーの訪れを知った町の人達から是非にと誘われ私達も喜んで参加する事にした。

でも、そのお祭り会場でーーーー。


キース君の耳当ての装備が、やんちゃな子供のいたずらで。

ひょいッと外されてしまったのだ。



広場にどよめく悲鳴が響き渡った。



「ハーフエルフ!??」

「女神様を呪った罪深きエルデスの末裔...!!」

「勇者があの魔王を産み出したハーフエルフだと!!」



人々は口々に叫び、キース君を非難し、罵倒し始めたのだ。


ただ勇者、キース君がハーフエルフという種族だという、たったそれだけの事で。


***


ハーフエルフ、というのは神話時代の罪人エルデスの末裔と言われている。

まだ女神様が地上に下りていらした頃。その女神様を妻にしようと不遜にも望み、捕らえる為に禁忌の呪術を女神様に掛けたのだ。


でも女神様はその呪術を跳ね返し、神気に触れた呪術は更に増幅してエルデスの元へと返った。その結果、彼は自らの仕掛けた呪術で魂を蝕み、史上初の魔王が誕生してしまったのだ。


***


勇者君がその罪深きエルデスの末裔であると知り、さっきまで歓待していた町中の人々がどよめき、戸惑い、そして口々にキース君を非難する言葉を投げ付け出したのだ。



ー勇者が絶望した原因はこれだったのだ。



人々の為に身を削る思いでたくさんの魔物を討伐し、三年という歳月を犠牲にして魔王を倒す為に頑張ってきた勇者を。

恐らくハーフエルフだという理由だけで拒絶したのだ。

だから前回の勇者は絶望したんだ。

あの私が見た魔王との決戦の場で勇者はたった一人だった。

たった一人で孤独にすべてに絶望しても、それでも魔王を倒してくれた。


勇者は、キース君は二人とも同じ誇り高くて優しい人だよ。


今まで散々傷つき、時に傷から高熱が出て苦しんだりもした。

凍り付くような寒さの氷山では凍傷を負ったりもした。

暴風雨や吹雪きの中、一日中さ迷い歩いた事もあった。

回復魔法で病や怪我を治せても、苦しさや痛みや恐怖はその都度その身に受けるんだよ?キース君は私を一番に庇ってくれるから誰よりも一番痛い思いをしてきたんだよ。


どうしてそんなキース君を種族だけで否定するの?

何故そんなひどい事が出来るの?


怒りの頂点に立った私が正気を失い、魔法の竹ボウキ君をざわめく人々に向けたその時。キース君が私の手首を握った。


仰ぎ見上げたキース君は穏やかに優しく微笑んでいた。



「うつけ者!!何を騒いでおるか!!」



横にいたネイビーちゃんが突然叫んだ。


「勇者キースの何を非難する事がある!!ハーフエルフがなんじゃ!!わしはずっとこの人間を見てきた!!勇者という名分を傘に着て邁進する事もその重圧に押し潰される事もなく立派な武人じゃあ!文句があるならわしが相手になるぞ!!」


ネイビーちゃん...!

普段、テントの中でキース君とじりじり押しくらまんじゅうしてたのはやっぱり仲良しさんだったからなんだね!


「いや、あれはこやつからミルフェの貞操を守るッ...ムガッ!」


キース君とまたじゃれあってる。

そんな二人をあきれた目で見ていたベリル君がやれやれという仕草をした後、いつもの軽い調子で口を開く。


「僕は元奴隷の生まれなんだけど?町の皆さんは僕も非難しますか?奴隷如きが勇者パーティーにいるな、と。」



静まりかえる広場にぽつんと口を開いた者がいた。




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