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初めての経験
―――以上、造船士として協力してくれた全ての人に感謝し、式の終わりとさせていただきます」
乗っている船の事が気になってしまい、ルダの言葉は全く入って来なかった。
「それでは、いざ出発!」
ルダの声に合わせて船が揺れ、不意の出来事に体がガクッとよろけた。
「先輩、式は終わったのにまだ仕切ってるんですか~?」
また不意に聞いたことのない声がした。先輩とはルダの事だろうか。聞いた感じ二十代くらいの声で、四十は越えているだろうルダを先輩と呼ぶのは少し違和感がある。
「とぼけてないでやることはないのか。掃除でもしてたらどうだ」
「作りたてですし掃除するのは面倒ですね~」
たった今親元を離れ、ただ一人の頼りの元であるルダが誰かと話していると、話し相手がいない。甲板をぶらつく乗組員達は皆、他の同僚と会話している。あらかじめ誰かと仲良くしとくべきだったな・・・。ウィルは少し後悔した。
しかし、あっという間に村のみんなと離れてしまった。こんな急に孤独感を味わうとは思わなかった。今まで感じたことのない寂しさを感じた。