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準備は終えた
「ウィル、もうすぐ船が出るぞ。それとも、心変わりしてここに残ってもいいがな」
「ちょっと待って、今行くから」
ウィルに声を掛けたのはルダという男だ。ウィルの乗る帆船を造る指揮をとった彼は、ウィルと親子ほどに年がひらけていた。だが、村のなかで世話になってきたウィルとルダは、とても親しい間柄となったのであった。
「まあ、しばらく顔が見れないのは残念だが、また会うときは色んな土産話を聞かせてくれよ。もちろん、土産の方も忘れずにな」
「はいはい。期待して待っててよ」
土産とはやっぱりローションのことだろうか、とウィルは思った。昔漂流してきた男は、出航して海を東に一週間横断してきたらしい。しかし、そんな心許ない情報を頼りに海へ行く不安と、村のみんなの期待が、少しだけウィルの体を重たく感じさせた。
「ほら、見えてきたぞ。もうみんな来てるみたいだぞ」