海へ
よく晴れた空から強い日差しが照りつける。もうすぐ16歳となる青年ウィルは、外に出て強い海風にさらされている風車を眺めていた。
「ウィリー、あんた本当に旅立つつもりなの?」
ウィルの事を愛称で呼ぶのは彼の叔母だ。彼の母の姉にあたる人で、彼女にこの青年は昔からよくしてもらっていた。
「もう後には戻れないよ。船まで頼んだのに臆病風に吹かれて乗らなかった日には、どのみち二度とこの村には帰って来れないよ」
叔母の問いに笑顔でこたえた青年は、実際止める気はなかった。しかも、この村から帆船が出るのは今回が初めてだ。これまではボートなどの小型の舟が出港する事はあっても、まともな船は何一つ存在しなかった。それが今日、自分を乗せて出発するのだ。彼は期待を胸に秘め、そよそよと風に吹かれる風車を眺めていたが、ウィルの叔母ローサは甥をこんな危険な旅に送り出したくはなかった。
「確かに最初の一歩を踏み出さないと進めないよ。だが、踏み出した時は本当に前に進んでるかは分からないものだよ。無理には止めないが、後続として進む時間も若いあんたには残ってると思うがね」
悪意はなくとも自然と叔母の口調は少し厳しいものとなった。しかしウィルは微笑んで、彼女の忠告を風に流す。