詠人不知
『
罪滅びろ
憂き世界
誰にも見えない
百八の
響きじゃ消せぬ
この罪よ
私の罪よ
この手から
明き視界
私に見えない
十八の
娘じゃ叶わぬ
この詩よ
私の罪よ
壊してくれるな
私の夢よ
』
昼休みの終了を知らせる予鈴が校内に流れ、図書室で読んでいた本に勝手に栞を挿み、本棚に戻した。
昼休みの図書室は静かだ……それは、別に誰の話声が聞こえない、とか、まったく物音がしない、というわけではなくて。むしろ、テーブルを囲んで会話をしている人間やパソコンの前で何か会話をしている人間もいるし、司書さんと図書委員が会話をしていたりもする。それでも図書室は静かだ。
話し声よりも、もっと圧倒的な数の寡黙な本達に囲まれてるせいだろうか。六人掛けのテーブル席に、僕ひとりで座っている。教室よりもずっと人口が少なくて、ひどくこの空間が広く感じる。
直接日の差さない東の窓際の席。昼食後、僕は毎日毎日その場所に落ち着き、本を開いた。数分文字を追うと、満腹になっている胃に引きずられるように瞼が下がって来る。窓からなんとなく入って来る光に身体を浸しながら、五分だけうつ伏して仮眠をとり、またページをめくる。
そうやって過ごしていた。それが、高校生活という、ごく限られた時間の正しい消費の仕方だとは思わないけれど。なにが正解なのかも、正解があるのかも、間違い以外があるのかも、よく分からなかった。正しい生き方なんて、一度だってしてきた自覚がない。
だから、どうしたかというと、こうして一番楽な――気楽な過ごし方を、しているだけだった。
五時限目の授業が始まるまであと五分。
図書室を出るといつも、教室に着いてから、不運な事故で誰かに話しかけられてしまう事がない様に、ゆっくりと、授業開始ちょうどに到着できるように歩いている。
ただ今日は、いつもとは違った。
図書室前の廊下にある掲示板には、文芸部のコーナーがあり、作品の紹介やあらすじ、短めの詩などが掲載されている。張り出されている掲示物は不定期で更新されるのだけれど、毎回、新しく紹介されるその作品を読むのが、僕の楽しみになっていた。
不定期、と言ってもだいたい月に一度くらいは更新されている気がする。もしかしたら、僕が公表日に頓着していないだけで、定期的なのかもしれない。
大半は執筆した小説の紹介だ。インターネットサイトにアップした作品のページのURLが載せられていたり、掲示板の下にテーブルを拡げ、短編小説を小冊子にして配布したりしている。
そんな中で、一人だけ、詩を掲示している人間がいた。著名はないけれど、詩はいつも一作しか掲載されていないし。文章の雰囲気から、全て同一人物の作品だということは想像できた。
初めてその掲示板に目を向けた時こそ、それはただの気紛れでしかなかったけれど。今となっては、その場所を確認しない日はなかった。小冊子を手に取るわけではない。インターネットにアクセスして小説を読むでもない。ある一人の書いた、その詩を読むためだけに。
昼休みの太陽は、五分間だけ暮れて行く。