お姉様の嫌がらせ
国王様をサロンへとお連れしました。その間、会話が一つもなかったことを除いては問題は起こりませんでした。もっと礼儀作法や社交性なんかを磨いていたほうがよかったみたいですねぇ。
「どうぞお座りなさいな、国王様。リーちゃんは私の隣にいらっしゃい」
鋭い目つきで国王様に椅子を進めた後、お姉様は優しく私を座らせてくださいました。対応の差に少し驚きましたが、それほど国王様と仲がいいということでしょうか……国王様がちょっと羨ましいです。もちろん優しいお姉様も大好きですよ!
ああ、それより国王様ですね。さっきから口を開かないのでついお姉様のことばかり考えてしまいます。国王様の従者の方はお座りにならなくていいのでしょうか? そもそも従者なのかもわかりませんが……。
「……ルリリア、もしかして怒ってる?」
「まあ、私が? そんなわけありませんわ。ところで、国王様はどの紅茶が好きだったかしら? アンブレ? それともバイカル?」
怒っていらっしゃる、というよりは機嫌が悪いようです。その相手はもちろん国王様ですが、理由はわかりませんね。
そんなお姉様に気づいているのでしょう。国王様は私でもわかるほど顔色が悪くなってきています。口元が引きつった笑みを浮かべていらっしゃいますよ! さっきとは全然違いますね。
「いやどちらも得意ではな……」
と、国王様が何かを言いかけた時、マリアさんが私達に飲み物を出してくださいました。ほのかにオレンジの香りがします……お姉様がおっしゃっていたアンブレでしょう。私は甘いのが好きなのでたっぷり蜂蜜を加えます。お姉様も同様に、たくさん蜂蜜を入れるんですよー。国王様は……あら?
「国王様、どうかなさいましたか?」
「えっ! ……ううん、なんでもないよアリーシャ……いただきます」
紅茶を少し口に含んだ国王様は、なぜか微妙な顔をしていました。お口に合わなかったのでしょうか?




