なくしもの
思い出せない、ということは、思い出さなくてもいいものだったのでしょうか……。
「ねえリーちゃん、なくしものは後で一緒に探してあげるわ。だから、お城であったことを教えてちょうだい」
「はい、お姉様。ええっとですね……」
国王様とおじさまのお召し物がとても格好良かったこと、国王様の婚約者として人形になっていたこと、リリーちゃんやナシュラ様に出会ったこと、ナシュラ様の婚約者として王妃様に紹介されたこと、国王様の影さんに出会ったこと……。
今思い出すとなかなかに大変な夜でした。国王様といるとろくなことがありません! もう!
そして私がお話している間の皆様はとーっても! 怖かったです。だんだん笑顔が引きつって、最後には見るのも嫌になるほど怒った表情でしたよ! なぜでしょう?
「そう……リーちゃんが国王とナシュラの婚約者……王妃様にも紹介された、ねぇ」
「想像以上にひどいわね」
「ああ」
「国王様方には幻滅です!」
あら……皆様、すごくお怒りです。使用人の皆様も幻滅だっておっしゃっていますし……。別に紹介されたからって結婚するわけではないのですがね。
私は、私の好きな人と結婚したいんです。国王様でも断りますよ? ……ううん、何か引っかかります。
私の好きな人、結婚、断る……? うーん、何か忘れてます。またなくしもの、でしょうか。




