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天然お姫様(※自覚なし)は恋愛に疎いです!  作者: ももせ
2章 ガーデンパーティー
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単純って愛されます


 私が冷や汗をかきつつ、とりあえずにこにこと笑っている間、微動だにしないおじさまと国王様。先に息を吹き返したのはおじさまでした。


「…ふっ、ははははは! ソファにっ、お嬢さんが!」


 …笑いましたね。ええもう、それは大きな声で、真っ赤な顔で。さっき吹き出したのが可愛く思えるほど本気で笑っています。私がこんなにも必死に正常を装っているのに、笑うなんてひどいです。

 そんなおじさまから眼を逸らすと、依然固まったままの国王様と目が合いました。おじさまの行動にも驚いているようで、私とおじさまを交互に見ては困ったようにその場で固まってしまったようです。もちろん国王様に声をかけるなんてできるわけがないので、私はひたすらにそんな国王様に笑いかけます。困ったら笑っとけってことです。


 ですが、私も少し焦っていたのか、淑女らしからぬへにゃっとした笑みを浮かべてしまいました。困った時につい出てしまう癖なんですよねぇ。治ったと思っていたんですけど、まだまだ淑女修行が足りていなかったみたいです。急いで持ち直したのでほんの一瞬の出来事…と思ったのですが国王様の見られてしまいましたかね…? 国王様のお顔が真っ赤です。何があったのかは知りませんが、目がバッチリとあっているのでたぶん見られましたね、恥ずかしい…。



 さすがに可哀想と思ったのか、おじさまは私の方へ笑いながら腕を伸ばしてくださいました。まだ息が整っておらずひいひい言いながらですが、私から言わずとも助けてくださるようで安心しました。さっきから言っている通り、私から助けを求めるなんて出来ませんからね。


 そしてやっと復活したのか、まだお顔に赤みを残したまま、国王様は口元を緩めつつもソファの方へと移動してこられました。私の目の前にあるソファに腰掛けると、その長い脚を組んで再び私をじっと見つめています。え、何ですか…?


「…父上、さすがにデビュタントのご令嬢を笑うのは失礼ですよ、っふふ」

「そういうアルベルトだって笑ってるじゃないか」

「い、いえ、笑ってないです」


 …いっそ笑い飛ばしてください。国王様にそんな笑っちゃいけない、みたいな扱いされるといたたまれなくて消えてしまいたいです。



 私もおじさまの腕に捕まろうと手を伸ばし…ましたがその手はすっと無視されてしまいました。おじさまの腕はそのまま私の脇の下へ。まるで小さな子供を持ち上げるかのように軽々と持ち上げられてしまいました。む、レディを突然持ち上げるなんて非常識です! もちろんそんな思いは口にも表情にも出しませんけど。


 ソファから離れられた開放感と、突然上がった目線に驚いて、ついビクッと体を揺らしてしまいました。誰でも突然持ち上げられたらびっくりしますよ、もう。私が驚いたことに気づいたおじさまは、私を地面に降ろすと私の頭をそっとひと撫でしました。


「ごめんねお嬢さん。馬鹿にしたわけじゃないことはわかってね」


 絶対馬鹿にしてた、なんて思ってませんよ、ええ思っていませんとも。


「あ、その顔は信じてないね? 本当だからね、お嬢さんが可愛くてつい笑っちゃっただけなんだ」

「疑ってなど…」

「そうだといいんだけど。まあとりあえず座ろうか。お菓子でも食べなよ」


 え? ソファから救い出してくれたのにまたソファに座らせる気なんですか?


「大丈夫だよ、直接座らせるなんてそんなことしないから」


 あら、顔に出てましたか。やっぱり私はまだまだですね。でもそれなら安心しました! このお部屋のどこを見てもクッションはありませんけど、私は何に座ればいいのでしょうか。


「はい、じゃあお嬢さんはこっちね」


  ぽんっと自身の膝を叩いたおじさま…本気ですか?


「父上? いくら小柄といえどデビューを控えたレディですよ?」

「ははっ、何怒ってるのアルベルト」

「怒ってなど。ただ、父上の行動が目に余りましたので」


 ソファに座ったままのお二人から何やら不穏な雰囲気が…さすがの私でも前陛下であるおじさまの膝に座ったりはしませんけど…むしろ喜んで辞退させてくださいませ。


「じゃあアルベルトは、幼気なご令嬢を立ったままでいらせろって言いたいんだね?」

「そんなことは言っていません。クッションを持ってくるようにデュークラント…は休みか」

「デュークラントは宰相で小間使いではないよ? お嬢さんの前でデュークラントを使用人扱いするなんてさすがは僕の息子だね」


 お兄様ってば国王様に雑用まで命じられていたんですね。まあ、お兄様は屋敷でも私の世話をあれやこれやと焼いてくださるので、案外嫌がってはいないと思いますよ。

 しかし、おじさまの言葉に声を詰まらせた国王様。私が気分を害すると思ったのでしょうかね。そんなことないですよ、なのでそんな顔でこちらを見ないでくださいませ。反応に困ります。


「というわけでお嬢さんはこっちね。持ち上げるよ〜」


 なんていうおじさまの声と同時に、私の体は浮き上がり、次の瞬間にはおじさまの膝の上でした。いえ私まだ了承してないです…なんてことを言うつもりは一切ありませんけど…


「あの…私のようなものが座らせていただくなど…!」


 ええ、さすがに不敬ですよ。そもそも私にも失礼ですからね? もうデビュタントですからね私? さすがにお兄様もここまで子供扱いはしません、あのお兄様でさえしないんですよ?!

 というか、膝の上に座っていると、おじさまとお話がしにくいです。すごく首が痛くなるんですよね。


 しかし、私がおじさまに強く言えるわけもなく。前門の虎後門の狼ならぬ、前門の国王様後門のおじさま、です。何か粗相を起こせばダブルでアウトです。デビュタントの私に対して嫌がらせかと思ってしまう顔ぶれですね! お家に帰りたい!


「まあいいじゃないか。はい、お菓子」


 お菓子なんてさっきまでなかったのに…? 机の上に並んだ、少ないですが良質そうなこのお菓子は一体どこから…? 


「ありがとうございます。でも降ろしてくださいませ、ここでは落ち着いて…もぐっ」


 おじさまはとても楽しそうに笑いながら私の口にお菓子を突っ込みました。びっくりです…普通そんなことします…? 私の方が位が低いとはいえ、他人の家の子供にそんなことします…? 


 ん、ちょっと待ってください。このお菓子美味しすぎませんか? 家で食べる物の数倍は美味しいです。マドレーヌが綺麗にデコレーションされた感じでしょうか? 優しい甘さは品があって、香りがとてもいいですね…舌触りもとろけるようで、食べ終わった後に口の中にふんわりと広がる甘さが素敵です…もちろん味だけではなく見た目も素晴らしく、チョコレートでしょうね、細かな装飾が美しいです。とても美味しいです、お菓子は人を幸せにする魔法の食べ物ですね。でもマリアさんが作るよりも美味しいお菓子が存在していたことにとても驚きました。


「…単純だなぁ。ふふふ」


 おじさまがそんなことを呟いていたことはつゆ知らず…。

皆様のおかげでジャンル別日間ランキング5位、累計セカンドランキング2位をいただきました!

ありがとうございます!


…まってこれはいつの話…?何年前のランキングの話をしてるんだろうね(現在はH31,4)




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