眩しいお人
国王様のお声ってたまに聞こえません。私の耳がおかしいのかとも思いましたが、どうやら国王様のお声がすごく小さいということに気づきました。普段は普通なのに、です。
影さんが無事戻ってきてくださったのはとてもうれしいですが、何の用で私たちに会いに来たのでしょうか? 私の質問に答えるために出てきたわけありませんし、何か大変な問題が……?
「実はさ、国王様に伝えたいことがあって。ルリリアたちがアリーシャを迎えに……」
「お迎えの時間よ、リーちゃん!」
一日ぶりに聞いた、ルリお姉様のお声! ハッとした時には、お部屋の扉が開かれていました。音もなく開いた扉の向こうには、大輪の深紅のバラを思わせるような美貌のお姉様……! と、デュークお兄様が。高いヒールでも姿勢を崩さず、優美かつ大胆に歩いてくるお姉様はとても素敵! やはりお姉様には色の濃いドレスが似合いますね~。朝なのにデコルテの大きく開いたワインレッドのドレスを着こなせるのはきっとお姉様だけでしょう!
あ、もちろんデュークお兄様も素敵です。宰相様の正式なお洋服ですね。真っ白な衣装が、デュークお兄様のゆるふわな見た目を引き締めてくれています。国王様の前だからでしょうか、いつもより真面目なお顔をなさっています。一瞬国王様を睨んでいるのかと思いましたが、きっと違います……よね? ……でも、残念ながら。お姉様の前だと霞んでしまいますね!
「お久しぶりね、国王様。私のかわいいリーちゃんの寝顔を思う存分眺めた気分はどうかしら? ……リーちゃん、おはよう。風邪の具合は? 大丈夫なの?」
「ええ、ルリお姉様。ご心配おかけしまして申し訳ありませんでした」
「リーちゃんが元気ならそれでいいの! さあ、家に帰りましょう?」
にっこりと微笑んだルリお姉様の眩しいこと! 同性で妹である私さえもくらくらとしてしまいます。せめてお胸をもう少し隠してくださればいいのでしょうけど……。
「ちょ、ちょっと待ってよルリリア。僕はまだアリーシャを帰すとは言ってないよ」
「……まあ、国王様。これ以上リーちゃんに近づくとどうなるかわからないのかしら?」
「……アリーシャ。まだ、帰らないでほしいな」
こっ、国王様が。国王様がなんとも言えない儚いお顔で私の手をきゅっと握りました。お姉様とは違った眩しさで直視できません! でも、お姉様は帰ろうとおっしゃっていますし……。どうしましょうか。




