影さんの帰還
寝起きの格好なんて恥ずかしいです。おはようございます、アリーシャです。
「こんな格好で申し訳ないのですが、ここはどこなのでしょうか?」
「ここ? ここはね……」
国王様は、なぜか言いにくそうに目を泳がせました。私、何かいけないことを聞いてしまったのでしょうか?
でも、お城ってお部屋がたくさんありますし、空き部屋か何かだと思うのですが……。
「ここってね、花嫁の部屋なんだよ」
「影!」
「……影さん?」
天井から聞こえてきた聞き覚えのある声……国王様の驚いたような声でわかりました。影さんですね! あの雨の中無事に帰ってきてくださったようでうれしいです。
「おはようございます、影さん。花嫁様のお部屋とはどういうことなのですか?」
「詳しく言うと、国王様の花嫁となる人の部屋の部屋の……部屋、かな?」
「部屋の部屋の……部屋、ですか?」
国王様の花嫁様となると、お部屋が三つももらえるのですね。でも、そんなに使うんでしょうか。
「うん。普段過ごす部屋、たまに過ごす部屋……極稀に過ごす部屋だよ。狭いでしょ?」
「確かに、私のお部屋よりは狭いですが……」
……あら? ということは、私の使用したベッドに別の女性が寝るのですよね? それってダメです。だって、他の女性が使用したなんて知ったら、花嫁様が悲しいでしょう?
「ベッド、買い替えますね」
「え?! いやでも……このベッド、これからもアリーシャに使ってほしいなぁなんて言ったら嫌われかな? 花嫁になってほしいって……」
「……ごめんなさい国王様」
「きっ、聞こえてた?」
「いいえ。全く聞こえなくて」
「そ、そう」
私は国王様が何を言っているのかわからなくて困っているのに、なぜか国王様は安心したかのようにほっと息をつきました。私にはきっと聞かれたくないお話だったんでしょうね……。




