寝起きの国王様ー国王様視点ー
「……国王、様?」
「う……ん」
なんだか、大好きな声が聞こえた気がする。それに、首がすごく痛いんだけど……。あれ? アリーシャのそばに置いておく物をいろいろ用意した後、僕どうしたっけ? アリーシャが心配でずっとそばにいて……気づいたら誰かの声が聞こえた気がして……。重たい目を開いてみたら、アリーシャが……って、アリーシャ?! どうして寝起きのアリーシャが?
「……アリー……シャ?」
「まあ! 国王様!」
眠たそうな目を見開いているアリーシャは、寝起きだからか普段より無防備でかわい……じゃなくて、一緒の部屋で同時に起きるなんてまるで夫婦みたいでちょっと恥ずかし……でもなくて!
「……よかった! 元気になったんだね!」
「は、はい。おはようございます、国王様。一つお聞きしたいのですが、まさかずっとこの部屋に……?」
「え? そ、そうだけど……」
まずいかも。もしアリーシャに『大した仲でもないのに一緒の部屋にずっといた国王様キモい』なんて思われたら! ああ、でもアリーシャだから大丈夫かな。思われたとしてもきっと眼中にないどころか意識されてないから……。自分で言ってなんだけど、悲しい!
「毛布も掛けずにですか? そんな! 国王様がお風邪を引いてしまわないか心配です……」
「責められるかと思った……。あ、僕は風邪なんて滅多に引かないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
よかった。まあ、アリーシャはあまり意識しなさそうだもんね。出会ったばかりの異性と一緒の部屋で一晩過ごすなんて僕だったら耐えられないかも。国王っていう立場上、暗殺とかもよくあるわけだから……。世間からすれば、男女が一晩一緒だなんてちょっと怪しい雰囲気だよね。あー恥ずかしい!
でも、眉を下げたアリーシャはやっぱりすごく優しくて、見ていると和むよねぇ。ついつい笑顔になっちゃうよ。社交界なんて結構ドロドロしてるからつい笑顔なんてめったにないんだけどね。さすがアリーシャ!
周りを信用しすぎないように育てられた僕からすれば、アリーシャなんてすごく危なっかしい。社交界できっと生き抜いていけないだろうから。だから、僕が守ってあげなきゃ。でも、今のところ、唯一信頼できるのは影だけ。アリーシャさえも……実は異国からの刺客ではないのかと疑っている僕もいる。考えたくもないけどね。一晩そばにいたのにこんなことを思うのもおかしい……か。
今はまだ……アリーシャに恋する幸せな日々が続いてほしい。だってほら、アリーシャが、こんなに嬉しそうに微笑んでいるんだよ?




