風邪を引いたアリーシャ
国王様にどこかの部屋に案内していただきました、アリーシャです。どこでしょうか?
影さんに部屋の手配をお願いした後、国王様は迷うことなくとある部屋に飛び込みました。そして優しくベッドに寝かされ、ただいま国王様に手を握られています。
「大丈夫だよ、すぐ医者を呼ぶから。ラングー公爵家の専属の医者は……」
「この雨の中では呼べません! 大丈夫です、風邪ではありませんから! この通り元気で……」
ベッドの上に座ろうと思ったのに、何故か体が重くて起き上がれません。おかしいですね、さっきまで平気だったんですよ?
「アリーシャ、無理しないで。雨に濡れたから風邪を引いたんだよ。医者を呼ぶのは止めるから、僕がそばにいてあげる」
「だ、だめです! 国王様に移ってしまったら……」
「アリーシャのそばにいたいんだ。ほら、これを飲んで」
「……はい」
国王様は、私に何かしらの薬をくださいました。どこから取り出したのかはわかりませんが、国王様がくださったものですもの。白くて、小さい錠剤です。水をもらって飲み込みました。
やっぱり、さっきの心がおかしかったのは、風邪のせいだったのでしょうか。今も頭がくらくらします。顔色が悪かったのは違いますが、雨に濡れたのはだめでしたね……。国王様に迷惑をかけてしまいました。
国王様、早くどこかへ行ってくれないでしょうか。移ってしまえば、国のみんなが悲しみます。私のせいで国王様が風邪を引いてしまったら、もう国王様に合わせる顔がありません。……なんだか、眠く……。
「アリーシャ? ……眠ったかな。僕のせいだよね。風邪引かしたなんてラングー公爵家に知られたら、もうアリーシャに会えないかも……」
……国王様が悪いわけでは、ありませんのに。息苦しくて、眠たくて……声が出ません。突然眠気が襲ってくるなんて……おやすみなさい……。




