初めての思い
リリーちゃんのお部屋の前に到着しました、アリーシャです。なんのお知らせもしていませんが、突然お部屋に入ってもいいのでしょうか?
うーん、悩みます。普通、突然行くことはありえませんし……失礼ですよね。いっそ、パーティー会場に戻ったほうがいいでしょうか……?
リリーちゃんのお部屋の前にいる兵の方々ですが、桃色の薔薇の紋章が胸元に刻まれています。リリーちゃんのお部屋の扉に彫られている模様も桃色の薔薇ですが……何か関係があるんでしょうね。そういえば、国王様のお部屋にも何か彫られていたような……?
あら? お部屋の中から何か聞こえます。それもなんだか聞いたことのあるお声。優しくて、男性の割には高くて……。そう、国王様です!
少しだけ。少しだけなら聞いても大丈夫ですよね。だって、お姉様が壁に耳あり障子に目ありっておっしゃっていましたもの。秘密のお話は秘密の部屋でするべきなんです! なのできっと秘密のお話じゃないですよね。そもそも障子ってなんでしょう?
「……アリーシャは来てないんだね。ありがとう」
「お礼は必要ありませんわ。アリーシャが見つかったら絶対に! 私のところへ会いに来てくださいね!」
「う、うん……。じゃあ、ナシュラのところへ行ってくるよ」
国王様、私のことを探してくださったんですか? それは大変です! だって、国王様はあんなに寒そうでした。私のことは放っておいてゆっくりしてくださればよかったのに。国王様は優しすぎますよ……。
ガチャ
あ、扉が開きました。このきらきら光っているのは、国王様の綺麗な御髪……。
「え……アリーシャっ?!」
「は、はい」
「よかった! 見つけた!」
国王様は私を見てすごくうれしそうに笑うと、腕を私の方へ伸ばしてきました。
「ひゃっ……こ、国王様?」
び、びっくりしました! 国王様が私のことを抱きしめたんです! お兄様やお姉様とは少し違って驚きました。優しい香りがします。国王様の腕がとても温かくて、優しくて……それに、なんだか心がおかしいです。
どうしたんでしょうかねぇ、私。雨に濡れたのが悪かったんでしょうか。早く家に帰ってお姉様とお話したいです……。物知りで優しいお姉様なら、きっと私の不調の理由もわかるはずです。




