勘違いはいけませんね
別に単純ではないんですよ? 私のカンは当たるんです。
「あの、ナシュラ様のお母様、どうして私が呼ばれたのですか?」
「マリーで構いません。本当に理由がわからないのかしら」
ナシュラ様のお母様のこと、本当にマリー様と呼ばせていただいてもいいのでしょうか……? そんなに親しいわけでもありませんし、マリー様の方が位も高いわけですし。
それに、理由って……?
「ふう。どうやらわかっていないようですね。……単刀直入に聞きます。あなた、そんなひ弱そうな身体でナシュラの子が産めるのかしら?」
「?! 母上!」
「え? ナシュラ様の、お子様ですか……?」
どういう意味でしょう? だって、そもそも私達とナシュラ様の間には何もありません。ナシュラ様との間に何かを作ろうとも思っていません。あ、でも、壁なら作っていいですよ?
ナシュラ様だって、私みたいな醜悪な人と仲良くなりたいわけありませんしね。
だからきっとマリー様は、私達の間に壁を作れといいたいんですね! 私ってば勘違いをしてしまいそうになりました。ナシュラ様のお子様が産めるのか心配されているだなんて。本当にダメな子ですよね、私……。
「母上! アリーシャが勘違いするだろ! 今の言葉は取り消してくれ!」
「何を勘違いするというの。あなたの子どものことですよ」
「だから、アリーシャは勘違いするんだって! よくわからないところに突っ込んでどうしようもなくなったら、アルベルトに取られちまうだろ!」
ああ……ナシュラ様も言っているじゃありませんか。私が『勘違いする』って。やっぱり、私がナシュラ様のお子様を産む、というのは勘違いなんですね。なら、マリー様を安心させてあげなくてはなりません!
「マリー様、ご安心ください。私、ナシュラ様のことなんとも思っていませんから! 好きとかそんな、全然ありませんから!」
マリー様に安心していただけるよう、笑顔で話しかけました。大丈夫ですよね。きっと、安心してくださいますよね!
あら……? ナシュラ様、なんだかしょんぼりしているように見えませんか? うーん、勘違いされたことを落ち込んでいるのでしょうか?
それに、マリー様まで。呆気にとられたかのように目を見開いていらっしゃいます。どうしてでしょうね? マリー様ってお呼びしたのがまずかったでしょうか。
「ほら……だから言ったろ、母上……」




