厳格なる母
今度こそ飛ばしますよ? 現在、ナシュラ様のお母様のお部屋の前にいます。
たどり着くまでの経緯は省きます。だって、ナシュラ様ってすごく国王様に似ているんですよ。質問ばっかり! なんですか? 私の好みを聞いて、リリーちゃんへのプレゼントにするつもりのですか? ……リリーちゃんに直接お聞きになればいいのに。
男性って、謎ですよね。
こんなことを考えているうちに、いつの間にかお部屋の前だったんです。
扉の横には、黄色い薔薇の紋章が入った服を着た兵の方々が並んでいました。うう……怖いです……。
「さーあ、行くぞ、アリーシャ。ちょっと厳しいこと言われる……かもしれないががんばれよ」
「は、はい……」
厳しいこと……ってなんでしょう? 少し緊張しますが、特に何も言われることはないはずです。責められる原因なんて……はっ! もしかして、ナシュラ様から逃げたからですか?! ち、違います。あれは国王様が逃げ出しただけで私は関係ありません!
あ……でも、国王様だけが悪いようにするのはダメですよね……。私だって逃げたのにはかわりありませんし。
憂鬱です……。
「母上、入りますよ!」
「失礼します……」
開いた扉の先は、とても厳かな雰囲気漂う空間でした。
王族らしい豪華絢爛な……ではなく、木で出来た温かみのある……とも言えない家具。唯一ソファーにはハートの形をしたクッションが置いていました。……変です。この部屋で一番浮いています。
そして、そのクッションに挟まれて、ナシュラ様のお母様は座っておられました。
切れ長の目がナシュラ様にそっくりですが、どこか冷たい印象を受けます。堅く結ばれた口、飾り気のないドレスからは、部屋と同じ厳格さが見受けられました。
ぴんと伸びた姿勢や、紅茶の飲む姿がとても美しいのですが、だからこそこの張り詰めた空気を醸し出しているのではないかと……思います。
私、何を言われるのでしょうか……?
ジャンル別日間ランキング15位いただきました。
ありがとうございます!




