嵐の中の影さんですー影視点ー
お城から抜け出し、ラングー公爵家を目指す影さんは────
「あーあ。こんな雨の中じゃ移動が厳しいんだよね……」
でもまあ、隠れなくてもいいから動きやすいけどね。……あ、見えてきた。お城の三分の二くらいかなぁ。大きいんだよね。
扉叩くのも面倒くさいや。どうやら……サロンにいるみたいだし、屋根から突入して驚かしちゃおーっと! くふふ……
~数分後~
ラングー公爵家家族の頭上にて。なんだか真っ暗な部屋だなぁ。家族全員で一カ所を真剣に見つめて何してるんだろうね。
さて、そろそろいいかな?
「やっほー、ごっきげんよう! ……ってあれ?」
反応なし、というか聞こえてない?
天井からぶら下がっているから世界は逆。視線の先には美貌の家族。でも向こうの視線は……もっと先。
「おーい」
うーん、またも反応なしかぁ。何見てるんだろ?
「おーい」
「うっさいわね! 静かにしなさい!」
びっくぅ!
迫力美人、えっと誰だっけ……そう、確かルリリアだ。
言いたいことだけ言って、まるで興味を失せたようにまた同じところに視線を戻す。そして一言。
「あんのクソ国王!」
あれ、意外と口悪いんだね。で、だから何見てんの────
「うっそ! アルベルトとアリーシャ?!」
ラングー公爵家の視線の先は、お城にいるはずのアルベルトとアリーシャ。絵なんかじゃない、動いてる! 会話まで聞こえるよ! ……ってことはもしかして、今日アリーシャが泊まっていくことも知ってるのかなぁ。
「あのー、ちょっといい? アリーシャのことなんだけど……」
「リーちゃん(アリーシャ)が何?!」
……この家族なんだか面倒くさい。説明ちゃんと聞いてくれるかな……




