リリーちゃん
とびきり大きくて、キュッとつり上がった目。小さな唇と鼻。金色の髪は高い位置で二つに結ばれていてとってもかわいいです。
でも、今その子の目は驚きに見開かれて、口は大きく開かれています。それでもかわいい子はかわいいんですねぇ。
私の顔を見て驚かれたようですけど……どうしてでしょうか?
「こっ、これがお兄様の婚約者なのーっ?! ……駄目じゃないお兄様! いくら綺麗なお人形でも結婚できないのよ」
お、お人形……!
それより、国王様ってこの子からどう思われているんでしょう。まるで諭すような言い方でしたよ? まるで国王様が人形でも結婚できると思っている可哀想な人みたいじゃないですか。
「違うよ! 彼女はれっきとした人間だよ。ね、アリーシャ」
「は、はい。ラングー公爵家のアリーシャ・ラングーと申します」
あうう……。すいません、立ちもせずに。私はソファーに埋もれたまま頭を下げました。
きっとこの子も王族の方なのでしょう。私ったらなんてことを! 王族の方を立たせておくなんて……。
どうしましょう。ナシュラ様の前で動けないなんて言うのは恥ずかしいですし、国王様にまただと思われるのも嫌です……。
「ラングー公爵家ですって……?! あのルリリアの?!」
「ルリリアは私の姉ですが……?」
な、なんなのですか? ルリお姉様が何かしてしまったのでしょうか……。でも、あのルリお姉様ですよ。とても綺麗で完璧な淑女のルリお姉様が粗相をするわけないですよね。私、なんてひどい妹でしょう、姉を疑うなんて。
「ル、ルリリアの妹さんがこんなにかわいいなんて! あいつめ~。こんなストライクな妹がいるなんて聞いてないわよ!」
あ、えと。なんだか姿に似合わず豪快な方ですね……。とても元気です。
ルリお姉様の知り合いの方でしたのね。初めはルリお姉様のことを嫌っているのかと心配しましたが、仲は良さそうです。だってあんなに真っ赤な顔をして顔をしかめているんですもの!
きっと私があまりに不細工なのでお姉様を不憫に思ったのでしょう……。
「はじめまして、アリーシャ! 私はリリーよ。これからよろしくね」
「リリー様……。よろしくお願いします」
「リリーでいいわよ」
「え、でもそんな……」
王族の方ですよ?! 様付けじゃないと不敬ですよ。呼び捨てなんてなおさらです!
まだ七、八歳くらいでしょうに、とても威厳がある方ですね。威圧感ではなくて……なんと言えばいいのでしょう?
「遠慮しないの!」
「じゃあ……リリーちゃん……」
は、恥ずかしいです! ちゃん付けなんて初めてですよ……。
「アリーシャったらかわいいっ!」




