優しい方
国王様にうさぎを捨てられ、ナシュラ様に詰め寄られているアリーシャです……。
ナシュラ様、口調が男の方になっていますよ。
「こんなかわいい子どうやって隠していたんだよ。……あ、俺はアルベルトの弟のナシュラ。よろしく」
え……と、私に挨拶してくださったのですよね。ナシュラ様のにっこりとした表情がとても素敵です。国王様と雰囲気が似ますね。
本当なら私も挨拶を返さないといけないのですが、今私はビスクドールですし……話しても大丈夫でしょうか?
「話してもいいよ、アリーシャ」
「ありがとうございます。……はじめまして、ナシュラ様。ラングー公爵家のアリーシャ・ラングーと申します」
「ラングー公爵家……。もしかして、ヒューの妹? あの醜悪って噂の?」
醜悪……。ええ、いいのです。本当のことですものね。こんな異様なグラデーションの青い髪も、平々凡々なこの顔も、他の方から見れば醜悪に見えるでしょう。
でも、私今日初めて社交界に出てきたのですが、皆様どうして私が醜悪だと知っていたのでしょう?
「ナシュラ! アリーシャになんてこと言うんだ。アリーシャは誰よりもかわいいのに!」
国王様……! もしかして私を庇ってくださっている……? いえ、そんなわけありませんね。国王様はお優しいからお世辞を言っているのでしょう。
でも、国王様がかわいいと言ってくださったこと、とても嬉しかったです。
一つ疑問なのですが、ナシュラ様が私のことを醜悪と言ったとき、蔑んだ感じではなく疑問に思っているように感じたのですが……。
「ち、違うよ。すごくかわいいから噂と全然違うって言いたかったんだ。そもそも噂の原因はヒューたちだろ?」
「む、そうだな。アリーシャが馬鹿にされるのはあの兄弟たちが悪い。誰にも見せたくないから醜悪だなんて嘘ついたり、一度も城に連れてこなかったし」
「そうだろ、アルベルト」
私が醜悪だと皆様が知っていたのはお兄様たちが原因だったのですか……?
ナシュラ様は私のことをかわいいと言ってくださいました。例えお世辞でも知らない方に言われると嬉しくなりますね。私もナシュラ様ほどの美貌があれば、自分に自信が持てたのかもしれません……。




