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天然お姫様(※自覚なし)は恋愛に疎いです!  作者: ももせ
2章 ガーデンパーティー
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すべてのはじまり

 こんにちは、アリーシャです。今日は、絶好のパーティー日和のようで安心しました。暑すぎず寒すぎず、日差しがきつくない程度に晴れていてとても居心地がいいです。


 屋敷を出てから早一時間ほどでしょうか? いくら近いとはいえ、我が大きな屋敷に庭、さらに大きい王宮と庭が付属すれば一時間でも近いものですよ? この国はそれなりに発展をしていますし、その分土地も広大ですから。

 あれから皆で朝食をいただき、軽く衣装を整えたのみで屋敷を出ました。別段お話するような内容ではなかったので割愛しましたが、デュークお兄様が私の隣に座りたいと騒ぎ出し、私の左右に座っていたヒューお兄様とお姉様に怒られていた程度です。聞きたい話でもないでしょう?



 さて話を戻しましょう、ただいまガーデンパーティーの入り口にたどり着きました。

 まだ来るのが早かったのようで、ご令嬢の数はまばらですね。皆様どこか緊張した面持ちで、和やかというにはいささか硬い雰囲気が流れているようです。まあ当たり前ですよね、私だって緊張しています。だって家族以外と会うなんて初めてなんですよ? 失敗は許されないですし、こんな見た目の私に友人ができるかどうか! それが問題です!


 歩くたびにさくりと音がする綺麗な芝生を踏みしめ、自然に見えるだろう笑みを浮かべながら、内心はバックバクです。入り口に現れた異色な私を見つめる数人と目が合い、さらに気分が滅入ります…ああ、やはり他人からの遠慮しらずな目は恐ろしいものです。

 ぎゅっとデュークお兄様の腕に回した腕に力を込めでもして、意地でも笑みを浮かべ続けなくては。エスコートしてくださっているお兄様は私の思いを汲み取ってくれたのか、ご令嬢たちの視線から守るように立ち位置を少しずらしてくださいました。お兄様…案外頼りになるのですね…いえ、こんな言い方ではお兄様に失礼ですか?

 そういえば一番頼りになるヒューお兄様は本番のデビュタントでエスコートしてくださるんですって。ちなみに、ルリお姉様は色々と準備があるようでここにはいません。何を準備するのか聞いてみたのですが、リーちゃんには内緒、なんて片目を閉じながら言われてしまったので、キュンとした私はにっこり笑うだけでお別れを告げました。



 それにしても…デュークお兄様がきらきらしてます。ええそれはもう、ものすごく。こちらがびっくりしそうなほどニコニコです。そんなにガーデンパーティーが楽しみだったんですかね?


「リーシャ、あっちに美味しそうなスイーツがあるよ。取ってきてあげるから…あ、ほらあそこ。あの椅子に座って待ってて!」

「はい、ありがとうございますデュークお兄様」


…お兄様楽しそう。デュークお兄様は甘いものに目がないですから仕方ないですね…おそらく私の気が紛れればと思っての行動なのでしょうけど。せっせと動き回ってスイーツを綺麗に盛っているお兄様がここからでもよく見えます。お兄様の美しさに周りの令嬢が見とれているのもよーく見えていますよ、うふふ。



 それにしても本当にいいお天気。こんな日はお部屋の窓を開けて、ゆっくりとまどろんでいたいですよねぇ。と、そんなことを考えながらぼーっとお兄様を待っていると、突然目の前が陰りました。


「こんにちは、お嬢さん。今日は誰かの付き添いで来たのかな?」

「あ、いいえ、デビュタントは私です」


 頭をあげると、見知らぬ男性が。特別豪華ではないのに、とても気品あふれるおじさまが声をかけてくださいました。…勘違いされていたようでとても驚かれましたが、まぁ仕方ないですね。私は通常よりだいぶ身長が低いですし、童顔ですからね。


「それは失礼。あまりにも愛らしい方だったので」

「ふふ、お上手ですね」


 そっと差し出してくださった手に捕まり、地面に足をついた私は軽く挨拶を交わし、にっこりと笑みを浮かべました。ええもちろん内心はドッキドキです。グローブをつけていなければ、今頃おじさまの手のひらを汗で濡らしてしまいそうなほどにはビビっておりますとも。


「よろしければ名前をお伺いしても?」

「ええ、もちろんです。私…」

「リーシャ!」


 あら、デュークお兄様です。そんなに慌ててどうしたのでしょうか? 少し離れたビュッフェからこちらに向かってくる、あふれんばかりにスイーツを手にしたお兄様。そんな心配そうな顔をしなくても、ここは王宮です。怖いことはないですよ。確かにおじさまはしらない方ですけど、不審者ではないでしょうし。

 びっくりするような早さで戻ってくるお兄様の凄いところは、あんなに盛ったスイーツが一欠片も落ちていないところですね! 


「面倒なのがきた」


 ポツリと呟いたおじさま、もしかしてお兄様のお知り合い?


「はいリーシャ、好きなの食べててね。残しても僕がちゃんと食べるから安心して…で! あなたはこんなところで何をしているんですっ陛下!」

「やあデューク、今日は休暇届けを出していたんじゃなかったかい? 休みの日まで王宮にくるなんて君は働き者だなぁ。そうそう、俺は陛下ではなくもう隠居の身だから、間違わないでね」


 ということは、こちらのおじさまは前陛下…? なんてことでしょう、私、失礼な態度を取っていないですよね? ひぇ、今更ながらに震えが。お友達すらいないのに、初めて会話した他人が前陛下なんて…あまりの緊張に目が回りそうです…!

 なんて内心は焦りつつも、外見は平常を装っております。これぞ淑女教育のたわもの、偉大なるお姉様のおかげ。公式な場ではないですが、腰を深く落とし頭を垂れます。ちなみにこれ、顔が完全に隠れる姿勢なので私は気に入っています。人間やはり表情というのは隠しづらいんですよね。いくら装ってもいずれボロが出るので、最初から顔を隠せるこの姿勢は素晴らしいと思うんです。


「ああ、楽にしていてくれ。お忍びだからバレると困るんだ」

「かしこまりました」


 なんてこと…! 表情を隠せると思ったのにこの仕打ちとは…! 


「ところでデューク。この子、君の妹さんかい?」

「…そうですが何か?」

「へぇ、ずいぶんとかわいらしい妹さんを隠していたんだね…妹は人目に晒せないほどの顔だからって言ってたのは本当だったのか。いい意味で、だとは思わなかったなぁ」


 おじさまの目がギロリと光りました。さすが前陛下です、威圧感がすごいです。

 でも…デュークお兄様ったら私のことをそんな風に紹介していたんですね。整った顔立ちのお兄さまからすれば、私の顔なんて人目に晒せるものではないのでしょう。色も異様ですしね…別に傷ついてないです、ええ。


「ちょ、ち、違うからねリーシャ! ほら、リーシャは座って食べててくれていいから!」

「大丈夫ですお兄様。自分の容姿のことは私が一番わかっています」

「待って待って! 本当に違うから! リーシャは世界一かわいいよ!」


 はい、わかってます。地味顔で申し訳ないです!!!



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