国王様の……妹様? 弟様?
国王様のお見合い(?)が始まってからそろそろ一時間が立ちます……。
今日って私の社交界デビューの日ですよね。何もできていないのですが、大丈夫でしょうか?
「……国王様、私もう会場に戻ってもいいですか?」
「アリーシャがやっと話してくれた……! お願い、あと一人だから」
あ、そういえば国王様と久々に話しましたね。なにせ私、人形化していたとのですから。
本当ならもう戻りたいですが、あと一人ならば待っていることにします。
「あのねアリーシャ。あと一人なんだけど、その……。とても変わった奴で」
コンコン
「……ぜひ人形化していてね。絶対話さないで」
なんだか国王様が怖い顔をしています。絶対話さないでと言われても、私はビスクドールですし、話すわけないですよ。
「ナシュラですわ。失礼します。……あら、かわいいビスクドールですわね」
ナシュラ……様? ええと、どこかで聞いたことのある名前ですね。どこだったでしょう……。
それから、なんだかお声が男の方のようなのですが……?
「ナシュラ……。どうして女装なんかして来るんだ」
「えぇー。なんのことです? 私は正真正銘、お兄様の妹ですわ」
もしかして……国王様の妹様? あ、でも国王様が女装して、と言っていましたね。だったら弟様でしょうか?
なんだか、国王様不機嫌ですね。もしかしてナシュラ様が苦手なのでしょうか? さっきだって変わった方とかなんとか言っていましたし。
「今日はね、お兄様の婚約者さんのビスクドールを見にきたのですわ。……まったく、いつ婚約者なんて見つけて来たんだよ」
……あ、あら。最後の方の口調が少し違ったような。やはり、男の方でしょうか。
それにしても、綺麗な方ですねぇ。羨ましいほどに豊かな金髪です。私と同じストレートですね。でも、私よりは短い(と言っても腰ほどの長さです)ですけど。目は切れ長で、睫毛がばっさばさです。細い方ですし、スレンダーというのでしょう。背もとても高くてかっこいい方ですね。
「ふんふん、綺麗な子ね。金髪と桃色の瞳が素敵だわ」
「「え、金髪(ですか)?!」」
あ……やっちゃいました。話してしまったのです! 国王様にかぶってしまいましたし。
「あれ、今誰かの声が……」
「してないよ、ナシュラ! それより金髪ってどういうことだ。アリーシャは青い髪だぞ」
「どこがよ。ほらこんなに綺麗な金髪で……ってええ! か、髪を通り抜けた?!」
え……触られてないですよ?
ナシュラ様の腕は……私に届く少し手前で止まっていました。




