ラングー公爵家は……ールリリア視点ー
はたまたその頃のラングー公爵家は────
「ふふふふふ……。一人の命知らずを見つけたわ……!」
確かに、以前はリーちゃんには国王くらいしか相手がいないと思っていたわ。でも、なんなのよあの国王!
馬車の中でもリーちゃんにぴったりくっついていたし、好みも聞くなんて! なんて男!
厚かましいにもほどがあるのよ。リーちゃんにつきまとっているだけじゃなく、婚約者に仕立て上げるとは!
私たちのリーちゃんを独り占めしようだなんて……!
「国王様は……私たちのアリーシャを婚約者にしてしまったのかしら?」
「そうよ、お母様! 許せない」
「死に値する」
「当たり前だよ、デューク」
今回はお兄様方も味方よ! お父様は……今アリーシャに意地悪をしたご令嬢の家を潰しに行っているけど、戻ってくれば激怒するはずよ。
大切なリーちゃんが国王なんかに取られてしまいそうなんだもの!
私たちラングー公爵家を敵に回すとどうなるか……国王にしっかりと教えないといけないわね……!
「何か手は打っているのか? ルリリア」
「デュークお兄様、私を誰だと思っているの? もちろん手は打ってあるわ」
リーちゃんほどの可愛さがあれば国王なんてちょろいもの。こんなことも予測していたわ!
「こんなこともあろうかと、うさぎの目から幻覚が見えるようにしておいたのよ。……ただし、うさぎの向いている方だけね。横から見れば普段のリーちゃんが見えるわ。まあ、うさぎは首が百八十度回るようにしてあるからどの方向からでも可能よ」
「……おまえ、そんなこともできるのか……」
「抜かりなくてよ、ヒューお兄様」
あのうさぎを作るのには苦労したわ……。首は回るようにしてあったけど、ぬいぐるみ特有の柔らかさがないといけなかったし。目から幻覚が見えるようにするのも大変だったのよ。
「どうして幻覚が見えるようになったのかしら?」
「それはね、お母様。うさぎの目からとある写真を映し出すことに成功したからよ! とても有名な画家の方をビスクドールや子供の絵を書いてもらったの。それをうさぎの目から映し出してリーちゃんにかぶせているのよ!」
「そうなの、すごいわねぇ」
どの絵を映し出すかはこちらで決めることができるわ。今回はたまたまリーちゃんがビスクドールになると宣言してくれたからいいものを、動物や食べ物だと映す絵がないから焦るわね。
だから一応、今のところは周りからリーちゃんが婚約者だとわからないわ。
よかった……!




