ちょっとお話し
……ふう、帰りましたね。
「あの……国王様、私が婚約者ってどういうことですか……?」
いつの間に婚約者になってしまったのでしょう……? 身に覚えがないのですが……。
「えっ?! だ、だってその方が納得してくれると思って……」
「私……お互いに好きじゃないと婚約するつもりはないです」
お母様とお父様は恋愛結婚をしたので、私も恋愛結婚がいいんです。政略結婚なんて……!
……あら、国王様なんだか落ち込んでいます? 肩が落ちていますよ?
「で、でもねアリーシャ。僕はアリーシャのこと好きだよ?」
「そうなんですか? でも、私は好きじゃないです」
そもそも、今日初めて会ったんですよ? 初めて会った人を突然好きになるなんて有り得ない……ですよね?
「……アリーシャがそっけない……。悲しい、悲しすぎる。でも大丈夫。お互いに何も知らないんだ。僕のことを知ればきっとアリーシャも好きになってくれるはず……! ああでも、一目惚れだなんて恥ずかしくて言えない……」
……? 何かつぶやいてます? えっと、よく聞こえないのですが……。
突然落ち込んだり、拳をぎゅっと握ったり、頭を抱えたり忙しいですねぇ。何をしているんでしょう。
「……でも、国王様はまだ誰とも婚約したくないんですよね。……仕方ないです。今日だけは私を婚約者と呼ぶのを許してあげます。でも! 私、人形か空気のふりをしておきますからね」
「……いいの? ありがとう、アリーシャ! 隣にいてくれるだけで嬉しいよ!」




