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天然お姫様(※自覚なし)は恋愛に疎いです!  作者: ももせ
1章 アリーシャを愛する人々
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お友達作りパーティの朝


 部屋に入る前のノックは3回。2回はお手洗いですよ! 間違うと恥ずかしいヤツです。あ、ちなみにですが、目上の方がいらっしゃる場合のノックは4回です。貴族である私がドアをノックする場面なんて僅かでしょうが、いつその機会が訪れるかわかりませんからね。覚えられることはできるだけ覚えるのをお勧めします。



私たちの準備が整ったことを確認した使用人がドアをノックします。名乗りをあげるのはお姉様。私はお姉様の後ろについて待機してるだけです。目線を下げるだけでいいので、楽でいいなぁ、なんて思ってないですよ?


「ルリリアとアリーシャです」


 こういった格式張ったことも大切、親しき仲にも礼儀あり、です。お姉様はこういうことにはとても厳しいんですよ。ありとあらゆるマナーをお姉様に教えて頂いたので、私は今までマナーの先生を付けられたことがありません。お姉様が教えてくださるならば必要ないと判断されました。

お姉様は社交界じゃ『魅惑の華』なんて呼ばれていますしね。そこらの先生よりずっと上品なんですよ。やはり自慢のお姉様です! そんなお姉様に合格をいただいた私だって、それなりに綺麗な所作だと自負しています、自慢じゃないですけどね。


「お入り」

「はい、失礼します」


 今答えてくださったのはお父様、つまり公爵様です。お姉様似の美形さんです(お姉様がお父様似なのかしら?)

 武よりも文という感じの落ち着きつつも派手な方ですね。お父様はお母様に出会うまでたくさんの過ちを起こしたといつも後悔しております。まあ、お父様はモテますしね。

 控えていた使用人が扉を開いてくださったので、私はお姉様に続いてサロンへ足を踏み入れました。ふわりと漂う甘い香りにお腹が刺激されます。今日はスコーンでしょうか。マリアさん特性のスコーンは仄かな甘味がそれはもう絶品です!



 と、そうではなくて…なんとサロンの中には家族はもちろん、使用人の皆様までお揃いでした!


「リーシャ! 久しぶりだね」

「はい、お久しぶりです。デュークお兄様」


 私の顔を見た瞬間ぱっと席を立ったのは、デュークお兄様ことデュークラントです。髪がふわふわでとてもかわいいんです! 


 …その割に背が高くてうらやましいですけど。お兄様はお城で宰相様をしております。お偉い様ですねぇ。お兄様はいつもニコニコしています。お母様に似てゆるふわです~かわい~。


 お姉様は少しきつめの美人さんですが、お兄様は丸い瞳が特徴の愛らしいお顔立ちです。亜麻色に近いブラウンの髪に、とろけてしまいそうな優しい同色のタレ目を見ているだけで癒されます。小さい頃はよく女の子に間違われたそうですよ! 妹の私から見てもかわいいんですから、他の女性はどう思っていらっしゃるんでしょうね。

 ちなみにお兄様に特定の女性がいるという話は一切耳にしたことがありません。婚約者もいないのですが、完璧なお兄様を好きにならない人間なんていないはずなのに…といつも不思議に思っています。



 …はっ! お兄様の愛らしい見た目に騙されるところでした。席を立ったお兄様が抱きついてこようとしたので、パッと避けてそそくさとお姉様の後ろへ隠れます。

 お兄様は重度のシスコンなるもので、私がお兄様を見てほのぼのしている内に頭を撫でたり、抱きしめたりするものですから油断大敵です。服が皺になってしまいます。え? お姉様はいいのにって? 当たり前じゃないですか、お姉様ですよ? むしろどんとこいです。



「リーシャ」

「ヒューお兄様! お久しぶりです!」


 ゆっくりと歩み寄ってきてくださったヒューお兄様ことヒューリストです。


 綺麗な深いブラウンの長い髪をいつも一つに纏めていらっしゃるんですけど、そのゆらゆら揺れる髪がかわいいんですよ! ついつい触ってしまいたくなるような艶やかさです。お兄様が歩く度に揺れるんですけどね、後ろから見ているとちょっと楽しくなります。

 切れ長な瞳は一見冷たく見えがちですが、誰よりも愛情深く細められるその瞳はもうたまりません。お兄様と結婚できる方は幸せですね…と言いたいところなのですが、残念ながらお兄様にも婚約者はいません。最優良物件なのに!


 それにこれが一番大切なのですが、お兄様は家族の中で唯一のシスコンじゃない方なんですよ! 重宝ですね。お兄様は私のことを抱きしめてくれますけど、とっても優しくです。

 もう一人のお兄様とは大違い。お兄様は剣術がとてもお上手で、若くして騎士団長をしているそうです。かっこいいですね~お兄様にぴったりのお仕事です!



「リーシャひどい! お兄様を差し置いてヒューと抱き合うなんて! …ヒューの方が僕よりもシスコンなのに!」


 ああ、お兄様が何か騒いでいらっしゃいます。こういう時こそ聞こえないふりがお役立ちですね! …あら、これではどちらのお兄様かわかりませんね。では、きちんと名前で呼びましょう。

 

 今日はいつもより少し騒がしいデュークお兄様ですが、優しいところもあるので慰めてあげなくてはいけません。デュークお兄様は大変面倒臭い方なので、ヒューお兄様ばかりにひっついていると後からの反動が怖いんですよ。

 以前体験したことがあるのでそれ以降は気をつけているのですが…怒ったデュークお兄様がヒューお兄様に地味な嫌がらせをはじめてしまって…非常に面倒くさかったです。


「デュークお兄様、よしよし」

「…リーシャ! お兄様は嬉しい! ヒューの顔をみてごらん、すごい顔をしてるよ」


 あら、デュークお兄様がなんだか黒いです。にんまりと悪い笑みを浮かべています。

 ところでヒューお兄様がどうしたんでしょう? 普通の顔…ちょっと呆れてるんですかね、という表情ですよ。あ、でもお姉様がわなわなと震えていますね。


「リーちゃんを離しなさい! この変態っ」


 だんっと足を鳴らしたお姉様。品行方正なお姉様も、家族の前では自然体です。

 デュークお兄様が変態さんだというのは初耳ですね。変態さんは嫌いです。嫌です。さよなら、デュークお兄様。

 …そんな顔したってもう慰めてあげません。



 デュークお兄様はとても明るくて陽気な方。ヒューお兄様は物静かで冷静な方。お姉様は社交的で優しい方…家族なのにこんなに違うんですね。まあ私は見た目が全然違いますがね!


 ちなみにですね、我が公爵家長男はデュークお兄様です。ヒューお兄様の方が長男っぽいんですけどねぇ。

 デュークお兄様は今年で二十六歳、ヒューお兄様は二十四歳、お姉様は二十歳です。私ですか? 私は十六歳ですよ~。ちょっと年が離れているんです。



「まあまあ、皆さん。朝食にいたしましょう?」


 笑みを浮かべ、そっと声をかけてくださったこの方は私のお母様。美人で優しい、自慢のお母様です。もうとんでもなく美人です! おっとり系です! お顔はデュークお兄様とそっくり。笑顔はお姉様とそっくりです。


「うふふ、今日はついにリーシャがデビュタントですわね。正式にはもう少し先だけど、リーシャにとっては今日も立派なデビュタントよ。だからリーシャの邪魔はしないで早く席についてくださいな」


 こんなに優しそうなお母様ですが、お母様に逆らえる人なんてこの家にはいません。騒いでいたデュークお兄様もすごすごと席につきました。




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