王宮についたら
まあ……! なんてきらびやかなんでしょう! ガーデンパーティーとは違った雰囲気の王宮は夢の世界のようです。
家から王宮が近いっていいですよね~。だって、長時間馬車の中なんて疲れますもの。
普段でさえ疲れるのですから、国王様のお話ししている今はもっと疲れますよ! でも、楽しい時もあります。だって、国王様ったら始終笑顔なんです。
「さあ、馬車から降りましょう。初めての夜会はきっと驚くことばかりでしょうが、僕がついていますからね」
「……ありがとうございます」
ついてこなくても大丈夫ですよ? いえ、むしろついてこないでください。
ルリお姉様が言っていました。美人は三日で飽きる、と。でも私は二十分で飽きました! そして退屈になりましたよ! どうすればいいでしょうか……。
あ、大きな扉の前に誰か立っています。もしかして、貴族の家によくいる、扉を開ける方ですか?
私の家にはいませんよ? だって、扉なんて自分で開けることができますし。
うーん、大抵は突然現れたマリアさんが開けてくれていましたがね。
「国王様と、パートナーであるラングー家公爵令嬢のご到着です」
扉は開けてくださいましたが、誰が来たかも言うんですね。大変です。
だって、この仕事だと今日呼ばれた貴族の全員の名前を覚えないといけませんから。国王様と同じですね。
「……ラングー家? ルリリア様かしら? それとも、醜悪と評判の妹様?」
「今日は社交界デビューのパーティーなんですから、醜悪な妹様だと思いますわ。ふふ、どんなお顔なのかしら」
「国王様がパートナーだなんて、とんでもない不細工な顔なんでしょうねぇ。きっとあまりの不細工さにかわいそうになったんでしょう」
んん? これって私の噂ですか? ……私、嫌われてますね。
でも、嘘は言ってないですよ。だって、私があまりに醜悪だから国王様がパートナーっていうのだって、きっと正解です。
私の噂をしている方なんて、金髪のぐーるぐるで、いかにもーなお嬢様なんですもの。他のお二人もいかにもーな感じですよ。
でも、あまりに遠すぎるので顔は見えません。向こうも見えていないでしょうね。
「き、気にしないでね、アリーシャ。君はこの中の誰より美しいんだから!……ち、あいつら……僕のアリーシャを傷つけやがって」
国王様からよくわからない言葉がでてきました。嫌ですねー。私、耳がおかしくってー。ふふふ。
私、傷ついていませんしね。
「……アリーシャ! 来たんだね、待ってたんだよ」
「おじさま! ……かっこいいですね~」
ずーっと向こうの方の豪華な椅子がある所から誰かが走ってくるので、誰かと思いましたが、おじさまでしたか!
白の装いが素敵です。国王様とは違った魅力があります。
「なっ、あの不細工が前国王様までに媚びを売っているわ! なんて厚かましいのかしら!」
「それに、おじさまって呼んでいるなんて! 身の程知らずよ!」
「でも見て。あの異質な髪。背だってあんなに低いわ。所詮は子供よ」
私って嫌われていますねぇ。仕方ありません。こんな髪ですし、見た目だって子供っぽいですしね。
それに、ルリお姉様をご存じということは、少なくとも四年前には社交界デビューをしたことになります。そんな方から見れば、私なんてまだまだ子供です。
でも、一応挨拶に行きましょうか! 仲良くなれるかもしれません。




