馬車の中にて
こんばんは、アリーシャです。この馬車、ふっわふわですね~。なんだか眠くなります。
「ねえ、アリーシャ。好きな人とか、婚約者とかいるの?」
「好きな人ですか? いませんよ? もちろん、婚約者も」
突然なんでしょう? 私の好きな人や婚約者なんて国王様に関係ないです……よね?
でも、私がいないと言った時、嬉しそうに微笑んだので答え方は正解だったようですね。よかった。
「じゃあ、好きなお菓子は?」
「え、えと、特にタルトが好きです。でも、季節の果物を使ったお菓子なら、全般好きです」
「ふむふむ、タルトに果物ね。じゃあ次は……」
……どうしてこんなに質問されるんですか? べ、別に私の好みなんてどうでもいいじゃないですか。
うーん、国王様だから貴族全員の好みを覚えないといけないんですかね? 大変です。でも、それなら私は国王様に尽くすべきですよね。
「好きな宝石と花は?」
「好きな動物は?」
「行きたい場所は?」
「王妃になりたい?」
好きな宝石はパールで、好きな花は明るい花。行きたい場所は海が見える丘です……が!
最後の質問なんですか?! 私が王妃ですか?! 無理ですよ~。なりたくないです。
なんだか面倒くさいです~。早く王宮についてほしいです。
だって、もうすぐ夜会が始まります。……あ、王宮についても国王様と一緒でした……。
こんな麗しい方と一緒なのに、全然気分が乗りません。自分のしたいことばかりする王族って、やはり苦手です。あまり覚えていませんが、昔王族関係で事件があったので、その原因で王族が苦手になったんだと思います。
「……あのね、きっと夜会で苦労すると思うんだ。だから、僕から絶対離れないで」
ぜひ断らせていただきたいですね!
さあ、王宮が見えてきました。




