出発
「こんばんは、アリーシャ」
「ご、ご機嫌麗しゅう、国王様」
ひゃー、国王様麗しいです! 白か似合うと思いましたが、黒の装いも素敵ですね。
な、なにより、馬車がすごいです。とある絵本に出てくるかぼちゃの馬車のような形をしています。白色で、美々しい装飾がされたお姫様が乗るような馬車なのですが、私が乗ってもいいんでしょうか?
「昼のドレスも似合いましたが、今のドレスも素敵ですね。……おや、そのうさぎのぬいぐるみはルリリアの手作りですか。ふふ、いい虫除けですね」
「はあ……。ありがとうございます」
うーん、だから虫除けってなんですか? ルリお姉様の手作りのぬいぐるみ、に何か理由がありそうです。
ルリお姉様も、国王様も教えてくれなさそうです。
「あのクソ国王……リーシャのパートナーとかやはり許せないな」
「ふふ……次リーシャに会おうとしたら容赦しないわ」
「リーちゃんを無事に返さなかったら命はないと思いなさい」
「俺からリーシャのパートナー権を奪ったことは一生忘れない」
「むかつくけどご愁傷様、国王」
はいはーい、上からお父様、お母様、ルリお姉様、ヒューお兄様、デュークお兄様ですね! もうばっちり聞こえてますよ。相手は国王様ですのに、大丈夫なんでしょうか……。
でも、デュークお兄様は少し味方をしてくださったのでセーフですよね! そうです!
「……ああやばい。ラングー家を敵に回すとやっかいなんだよね」
こ、国王様が困っていますよ。大変です。
ラングー家を敵に回すと大変ってどういう意味でしょう? 国王家に次ぐ権力を持っているからですかね?
さすがに使用人の皆様は何も言いませんが、目が怖いです。ギラギラしているように見えるのが気のせいならうれしいのに……。
「とりあえず、城に向かいましょうか。……どうぞ、お姫様」
「は、はい! 行ってきますね、皆様」
お姫様なんて……。恥ずかしいです。そんな高貴じゃないですよ。
この時、皆様が笑顔で送り出してくださってよかった!




