味方は多いと思います
「「「はぅ…」」」
あら? 皆様が胸を押さえています。どうしたのかしら…なんだか、私が必殺技を発揮したら皆様このようになるんですけど、やっぱりやめるべきですかね?
「リーシャ様って、ご自分の美貌をわかっておりませんよね!」
「そうねぇ、でもそれがいいのよ! あんな風にお願いされちゃったら断れないわ」
女性の使用人さんが端の方で何か言っています。残念ながら声は拾えないのですが、どうやら気分を害されたようではないので成功というところですかね。目線を向けていたことに気づかれたのか、私と目が合うとさっと頬を赤らめました。
人が顔を赤らめるのは羞恥からであったり気恥ずかしさからであるのですが…どうして頬を赤らめたのでしょうか? え、もしかしてあれですか?! デビュタントなのにまだあんな子供みたいな真似を…って意味ですか?! わぁあこれはもう絶対にやめた方がいいですよね恥ずかしいです!
「くっ、不覚だったわ。まさか国王がもう行動に出るなんて! 本当なら夜会で面会させてさっさと帰るつもりだったのに。確かにリーちゃんには国王ぐらいがちょうどいいとは思ったけど、やっぱり嫌!」
「でもアルベルトよりいい男なんてこの国にはいないって結論が出たじゃないか」
「うるさいわねデュークお兄様、わかってるわよ」
はぁと大きく息を吐き出したお姉様。どんなに怒っていても気品を失わないのは一体どうして何でしょう? 美しいお姉様のお顔が私のせいで歪んでしまっていると思うととても悲しいです。
やっぱりお姉様もさすがに怒りを抑えられませんよね…だって私が約束を反故にしたんですもの、お姉様がお怒りになられるのも最もです…。
「うーん、でもリーシャが望むなら今日くらいはいいんじゃないかしら」
「お母様!」
優しいお母様! せっかくお母様が理解してくれているのです。お姉様折れてください、お母様頑張って! ここでお姉様が折れてくださらないと反逆罪です…!
「リーシャがそう望んでいるんだ。かわいい妹のお願いだろう?」
「お父様まで!」
まあ! お父様も認めてくださるんですね。でもまぁ、国王様のご命令に公爵家程度が逆らえるはずがありません。お父様は当主ですもの、私のためでなくとも同じ判断をしたでしょうね。
「デュークラントもそれでいいわね?」
「…構わない」
「…もう! リーちゃんが今度お姉様のお願いを聞いてくれるならいいわ」
「お姉様…! ありがとうございます」
よかった…折れてくれました。もし折れてくれなかったら、国王様の命に背くことになりますからね、安心です。
でもお姉様も本当は分かっているはずなんです、私が国王様にご命令されては断れないことを、お姉様自身も逆らってはいけないことを。それでもきっと、約束は守るべきだという人として大切にすべきことを私に教えてくださったのでしょう…! さすがはお姉様です、至らない私に親身になって教えてくださるなんて私にはもったいないお姉様です!
お姉様が認めてくださると同時に、サロンの空気は少し軽くなりました。何人かの使用人の方は準備があるようで部屋から退出し、残された私たちは席に着くようにお母様に促されます。
「よかったわね、リーシャ。お城は怖くなかった?」
「はい、とても綺麗で温かなところでした」
「そう…そういえば、アルベルト様はいつ迎えにいらっしゃるの?」
「…あ」
…時間、伝えられましたっけ…? もしや私に記憶がないだけでデュークお兄様なら覚えて…いないようですね! あの時は確か、デュークお兄様に腕を引かれて挨拶もそこそこに退出したような…ふふ、そんなわけ…そんなわけないと誰か言ってください〜!




