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ただいま、皆様


「リーちゃん、そろそろ帰ってくるかなぁ」

「そうねぇ。もうそろそろ帰ってくるわよ」


 この声はルリお姉様とお母様ですね。賑やかなサロンから聞こえる声はとても穏やかで帰ってきたのだととても安心できます。初めて出た外の世界は思ったより怖くありませんでした、きっとおじさまや国王様のおかげです。

 たくさんの人がいる場は緊張しましたが、キラキラしたドレスや楽しそうな女性は美しくて。初めて足を踏み入れたお城は荘厳さと同時に温かみがあって。声には出しませんでしたが、この国はとても素晴らしい統治者がいるのだと確信できました。


 そんな素晴らしいガーデンパーティーだったのですが…国王様にパートナーをお願いされたと伝えてしまったらみなさんどんな反応をするのでしょうか…!

 勝手なことをと怒られてしまうでしょうか、それとも頑張ってと励ましてくれるのでしょうか。とりあえずヒューお兄様に怒られるのは仕方がないと思います。


「大丈夫ですよ、アリーシャ様。行きましょう」

「僕がフォローしてあげるから」


 マリアさん、デュークお兄様…ヒューお兄様が怒ってしまわれたら助けてくださいね…!


 コンコンコン


「あら、帰ってきたみたいよ。どうぞ」

「「「失礼します」」」


 マリアさんが扉を開けてくれました。部屋の中は温かな光が溢れていて、やはりとても和やかな雰囲気です。使用人の皆様とお母様達でお茶会を開いていたようですね…辺りに紅茶の香りと甘いお菓子の香りがしますし、皆様席についていますもの。私の家族は甘党なので、一日に一回はお茶会を開いているんですよ! 

 入ってきたばかりの使用人さんは、主人と同じ席に着くなんて! とよく言われますけど、最後にはきちんとお茶会に参加してくれているんですよ。うふふ、お母様の作るお菓子は味だけではなく香りだって格別ですからね! だから、ラングー家はみんな仲良しなんです。


「おかえりなさい、リーちゃん!」

「た、ただいま、ルリお姉様」


 うー、ルリお姉様のお胸が苦しいです。突然抱きついて来られると受け身が取れません。困ります! 

 お母様も笑ってないで助けてください~。


「おかえり、リーシャ、デューク」

「ただいまかえりました、お母様、お父様、ヒューお兄様」


「「おかえりなさいませ! デュークラント様、アリーシャ様!」」

「ただいま、皆様」


 外に出ることがないものですから、ただいまなんて言うのは初めてです。あ、もちろん家の庭に出たりはしていましたよ? でもその際のただいまとは少し違いますからね〜。

 いつもはおかえりなさいと伝える側です。帰ってくる皆様はこんな気分だったんですねぇ。


「ガーデンパーティーはどうだったの?」


 にこやかに尋ねられたのはお母様。皆様のワクワクしたお顔を見ていると胸がチクっとします…!


「リーちゃん、お友達は出来た?」


 お姉様まで! これは大変です…お友達…おじさまと国王様はお友達、じゃないですよね? 私お友達が出来てません、そもそもどなたとも会話をしていないんですもの!


 口を閉じたまま微動だにせず微笑む私に皆様は心配そうに首を傾げました。ああ、言えるわけありません。女性のお友達は出来ませんでしたが国王様にはパートナーに誘われました! なんてそんなこと!  

 デュークお兄様にちらりと目線をやるとそっとそらされました。え、お兄様?!

 …お兄様の裏切りは忘れません、何かあるたびに今日のことを話題にしてあげます、もう!


 お兄様はともかく、この状況はダメです。誤魔化しようがないんですから正直に言うしか方法はないんです。でも、でもですよ! 今朝の様子を見るに、お姉様は国王様にあまり良い印象を抱いている感じではなかったですし、ヒューお兄様だって約束を破られたら怒りますよね…。


 いえ…今言わない方が問題です、よね。でもその前に深呼吸…!



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