国王様登場です
影さんが来てくださって本当によかったですよ。このままでは国王様に会えずじまいでしたからね~。
「まさかリリーといると思わなかったから色々探しちゃったよ~。あそこの影って不親切だからさぁ、僕が探してるってわかってるくせに教えてくれないんだよね」
「そうなんですか? 影さんたちってみなさんが仲良しなわけではないんですか?」
「えー、ないない。むしろお互い嫌ってるよ」
初耳です。でも確かに、家の影さんたちが仲良くしてるイメージってあんまりないですねぇ。そもそも全員揃って目にしたことがありませんし。
私なんて自分の影さんもきちんと見たことがないんですし、他の方よりきっと知識がないんでしょうね。もっと勉強しなくては……!
「ま、でもあんまり離れてなくてよかったよ。リリーはわざとここを選んだのかなぁ……っとそれより。はいアリーシャ、着いたよ」
……あら? この扉、なんだか見覚えがありますよ! 一見すると簡素なのに、実は細かい青の薔薇の装飾が施されたこの白い扉は!
「初めて国王様にお会いしたあの部屋ですね?!」
絶対そうですよ。この扉でした! お城を少し歩いて気がついたことなんですけどね、一つ一つ扉の造りが違うんですよ。例えばこの扉の薔薇はブルームーンを模して彫られていますけど、別のお部屋の扉はカリーナを模したと思われる装飾でした。ほんの些細な違いですけど、よく見ると全然違うんです。
花にかなり詳しくないと解らないほどのものですので、きっとみなさん違いに気付かれないと思いますよ。
「そうだよ、アリーシャよく覚えてるね。きっとアルベルトもイライラしてくる頃だろうし、さっさと会いに行かなきゃ。ほら、どーぞ」
影さんに肩をぽんと押され、気付けば部屋の中に入っていました。失礼しますくらい言わせて欲しかったです……ほら、ヘンリがちょっと怒ってますよ。
と、そんなことを思っている時のことでした。ガタッと何かが大きく揺れた音に少し驚き、その瞬間に私の視界は真っ暗、フリージアの良い香りに包まれました! ……この香りすごくいいですよねぇ。私も使いたいところですが、そんなことをすると国王様とお揃いみたいになるのでとても出来ません。残念です……。
「ああアリーシャ! 会いたかったよ! 待たせちゃってごめんね、すぐにでも会いたかったんだけど、さすがに朝出来なかった仕事を片付けないと……」
「国王陛下、僭越ながら未婚の娘に突然抱き付くのは如何なものかと。返して頂きますね」
あ、この声はヘンリですね。残念ながらまだ国王様の腕の中なので、ヘンリがどのような表情をしているのか見えません。
さすがに国王様相手に強気に出ることはないだろうと踏んでいましたが、案外そうでもなかったみたいです。べりっと国王様から剥がされた私は、現在ヘンリの後ろに隠されています……今度は国王様のお顔が見えませんねぇ。
それに私、まだ未婚ですけど、国王様と婚約するんでしたよね? それなら、世間体的に抱き付かれても問題はないのでは……?
まあ、難しいことはよくわかりませんので、この辺はヘンリにお任せしましょう。
というか、どうして私はお城に呼ばれたんでしたっけ……?
よかった…ぎりぎり日曜日!
国王様登場とか言いつつ最後の方にちょこっと出てきただけでしたね…次話からはばっちり登場ですよ!
次回更新は…水曜日(がんばるよ!)




