隠れていたのは……?
おじさまの仰るもう一人ってどなたでしょう? 甘いものが好きな方だと嬉しいですよねぇ。
「……もう! お父様ったらダメじゃない! せっかく隠れてたのにー!」
「あ、そうだったのか。ごめんね、リリー」
リリーちゃん? リリーちゃんが隠れていたんですね! びっくりしました!
角からパタパタと飛び出してきたリリーちゃんは、そのままおじさまに飛び付いてしまいました……走ってきたリリーちゃんの勢いでおじさまが転びそうに、なんてなってないですよ? はい、たぶん見間違いです。
「お父様はいつもいつも迷惑なのよ。どうして私が隠れていたかもわからないくせに、勝手にバラさないで頂戴! ふん、どうせアリーシャに良いところを見せたかったんでしょう? お見通しよ! お父様のばか!」
おじさまに抱きついているためリリーちゃんの表情は見えませんが、声色が少し冷たいような……。
「リ、リリー? さすがのお父様も傷ついちゃうかなぁ……ほら、アリーシャも見てるよ?」
「そんなのわかってるわ! ……こほん、こんにちは、アリーシャ。昨日よりも今日のアリーシャの方が貴女らしく見えるわ! すごくかわいい!」
おじさまから離れこちらを向いたリリーちゃんは、とてもかわいい笑顔を浮かべていました。おじさまにはどんな表情をしていたのか気になりますね……。
「こんにちは、リリーちゃん。私よりリリーちゃんの方がずっと素敵です……あ、リリーちゃんはもうお昼は済ませてしまいましたか?」
「ええ、でも大丈夫! 甘いものは別腹って言うんでしょ?」
ね? と笑ったリリーちゃん。大きな猫目が少し細められて、きゅっと上がった口角がまるでイタズラが成功した小さな子供みたいで……なんだか微笑ましいですねぇ。
でも、お昼を済ませてしまったのならリリーちゃんの分は少し小さめに切り分けましょうか。
「あ、ねぇアリーシャ。とっておきの場所があるからそこで食べましょ!」
わかりました――――と返事をする間もなく、リリーちゃんに手を引かれてしまった私です。
もちろんおじさまとヘンリは後ろからついてきていましたよ!




