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もう一人いらっしゃったみたいです


 肩を落として仕事へ向かうお兄様。ちらっと私の方を振りかえるのを止めません。……引き留めたりしませんよ?


 私が引き留めないことをわかったのか、お兄様は一層悲しげな顔をして走り去って行きました。……ちょっと可哀想だったでしょうか。


「リーシャ。今追いかけるとデュークの思うつぼですよ」

「だろうね! あーもう、あんなデュークラント初めて見たよ。……くくっ」


 あんなお兄様を初めて見た……? お兄様、おじさまの前ではいつもと違うのでしょうか? むしろ私は、お腹を抱えて笑うおじさまにびっくりです……。


 そういえば、お城に着いてからもう一時間ほど経ちましたね。デュークお兄様のせいで昼食を食べ損ねてしまいましたよ。もう! 今食べると夕食が入らなくなってしまいますし……でも残すのはもったいないですよね……うーん。


「ねえ、ヘンリ。昼食のメニューは聞いていますか?」

「はい。リーシャの好きな木苺を使ったタルトだそうですよ」


 木苺のタルト! これはあれですね。私が家に帰った時にお母様たちが食べていらっしゃったタルト! あの時は結局食べることができなかったので、とても残念だったんです。だって木苺のタルトはお母様の得意料理なんですから! 


「え、ちょっと待って。タルトって昼食として食べるものなの?」

「リーシャは甘いものが好きですので」

「……答えになってないよね?」


 普段はきちんとした昼食を食べてますよ~。でも今日は特別ですからね。お城に呼ばれる、なんてことは滅多にないですから。

 それに……タルトを食べられなかった私のためにわざわざ昼食にしてくれたんだと思うんです。たぶん、ですけどね!


「一切れくらいなら大丈夫だと思いますよ」

「ヘンリ……! ほ、本当? 食べても大丈夫かしら?」

「むしろ残すと奥様が悲しまれると思います」


 ヘンリの言う通りです……! せっかくお母様の手作りですもの。食べないといけませんよね。


「なら、せっかくですし三人で頂きませんか?」

「あ、僕もいいの? じゃあお邪魔させてもらおうかな――っとそうだ。あと一人いいかな?」

「ええ、大丈夫ですよ!」


 それはもちろん大丈夫ですけど……どなたでしょう? 道案内をしてくださった使用人の方でしょうか。いつの間にか姿がなくなっていたので気にしなかったのですけど……?


「ありがとう。……ほら、アリーシャもいいって言ってくれてるし、出てきたら?」


 おじさまが後ろを振り返り声をかけました……一体どなたに? 見えるのは先が見えないほど長い廊下だけですけど……。

 あら? 今何か見えましたよ。すぐそこの曲がり角の辺りです。誰かいるのでしょうか?





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