乱入者
お城に到着してからお兄様に会えるまで……なんだか、長かったです……。やっぱりさすがお城ですよねぇ。ちょっと広すぎます。まあ、ヘンリに担いでもらうことなくたどり着いたので、それだけで十分ですよね。
「到着しました。この中でデュークラントは休憩中だと思います。……大丈夫ですか?」
「は、はい。ご案内ありがとうございました」
少し疲れましたが、この部屋の中にお兄様がいるんですよね。休憩中に押し掛けて申し訳ない気もしますが、忘れたお兄様にも責任があると思うんです。なのでさっそく……
「誰!? せっかく休憩中なのに扉の前でうるさいん……んんんリーシャ?!」
「デュークお兄様! ごめんなさい、うるさかったですか?」
「あ、ううん違うよ! 違うから! ああ、ごめんねリーシャ。大丈夫?」
びっくりしました……扉の開いた勢いで転んじゃうかと思いましたよ。お兄様、怒ってらっしゃるのかしら……。もし後ろでヘンリが支えてくれていなかったら、危ないところでした。
やっぱり休憩中ですものね。家族であろうと邪魔されるのは嫌ですよね……。迷惑をかけてしまいました。
「ごめんなさい、お兄様。私、お母様に頼まれて昼食を持ってきたんですけど……迷惑、ですよね」
「まさか! わーいリーシャありがとー! すっごくうれしいよ! ……ところでヘンリ、ここに来るまで誰にも会わなかった?」
「……」
「え、ちょっとなにその間。正直に言え。潰してくるから」
お兄様がヘンリと内緒話をしています……私と話している最中だったのにお兄様ったらひどい!
あ、そういえばここまで案内してくださった方がいませんねぇ。いつのまにいなくなったのでしょう?
「……誰にも会ってませんよ、デューク」
「ほんとに? リーシャに誓える?」
「リーシャに誓う意味はわかりませんが、誓えます」
「……ならよし。リーシャ、せっかくご飯もってきてくれたなら一緒に食べよっか!」
どうやら内緒話が終わったみたいです。お兄様が怖いお顔をしているように見えたのですけど、きっと気のせいですよね。あのゆるふわなお兄様が怖いお顔なんて出来るわけありませんし。
「お兄様がそういうのでしたら、ぜひご一緒させてください。……もちろんヘンリも!」
「……もちろんだよ。じゃあ、二人とも部屋に入って」
ヘンリも、と言った瞬間、お兄様少し眉をひそめましたか? いえ、そんなわけないですよね。
と、その時、誰かが私の肩にそっと手を置きました。ヘンリでしょうか?
「三人でもいいかい?」
「これ以上増えるとリーシャと同じ空間で息をする人間が増えるので嫌ですよ、おじさま?」
「アリーシャ以外におじさま呼ばわりはされたくないんだけど……」
そう、おじさまです。つまりは前国王様です! 後ろを振り向かずに言い当てたお兄様……さすが宰相様ですね!
それにしても私と同じ空間で息をする人間が増えるので嫌って……なんなのでしょうか。もしかして私、息まで汚れているのですか……? ちょっと悲しいです……。
「ま、今日は特別許してあげるからお昼分けて」
「何故そうなるんです? 嫌だと言いましたよね?」
「未来の娘が持ってきたご飯だよ? 未来のお父様が食べなくてどうするんだ」
「リーシャはあげませんからね!」
おじさまったら……確かに婚約することにはなりましたが、私なんてきっと愛妾になれるのかすら怪しいと思いますよ? 国王様の婚約者になったのは仕方のないことですし。私としてはお母様たちのように愛ある婚約がしたかったです……まあ、政略結婚だと思えば気になりませんけどね!
それに国王様ですよ? 世の中の美しい女性を選び放題なのに私を選ぶだなんて……ありえませんよね!
歩いて疲れましたし、そろそろお昼を頂きたいのですけど……まだ無理そうですかねぇ?
あ、ちゃんと自分の分はもちろん、ヘンリの分のご飯も持ってきてますよ!




