国王様のおかえり
国王様が今までにないくらい不安げな表情をしていたので、ついつい甘いことを言ってしまいました……。もちろん、国王様に言ったことに嘘偽りはありません。全て本心です! ただ……婚約までする必要、あったのでしょうか。
……承諾してしまったものは仕方ないですよね。ええわかっています! それに……あんなに嬉しそうな表情をした国王様に『やっぱりなし』なんて言えませんよね……。
「ねえアリーシャ、さっそくで悪いんだけど、今日から城に来てくれないかな? やることがたくさんあるだろうし……いいよね、ルリリア?」
「……ええ、いいわよ。リーちゃんが決めたことだもの」
今までずっと黙っていたルリリアお姉様。お姉様ならダメって仰るかしら、なんて思っていましたが、そんなことはなかったみたいです。ただ……満面の笑みを浮かべているお姉様は、少し怖いです……。いえいえ! 美しいお姉様の微笑みはもちろん神々しいですが、なんだかいつもの優しい笑みと違うような、そんな気がします。
「へぇ……いいんだ。ルリリアなら婚約を解消させるかと思ったよ」
あら、影さんいつの間に席に着いていたのでしょう。机に頬杖をついてニヤニヤしています。
「別に問題ないもの。婚約程度のことで喚いたりしないわ。いい虫除けにもなるし、リーちゃんにとってもいい話に違いないんだから」
「まあ、ラングー家と王家が婚姻を結べば、この家は更に繁栄するだろうからねぇ。アリーシャも王妃でしょ? そりゃあいい話だよね!」
「失礼ね、違うわ。繁栄とか王妃とか、そういうことじゃないの。……もっと、別のことよ」
「ふぅん」
お姉様と影さんって、いつの間にあんなに仲良くなったのでしょうか。お姉様、あまり仲の良くない方とは会話を続かせないんです。失礼のない程度話て、すぐどこかへ行ってしまうんですって。デュークお兄様情報ですよ! さすがお城で宰相を勤めているだけあって、お兄様は家一番の情報通なんです!
「……じゃあ、準備ができたら城に来てもらってもいいかな? 話しておかないといけないこと、たくさんあるから。本当は今言うのが一番なんだけど、このあと仕事があって……。もちろんアリーシャが来るまでに終わらせておくから!」
「はい、わかりました。なるべく遅く向かったほうがいいでしょうか?」
「ううん、早く来てもらっても大丈夫だよ。どうせなら城を見てもらっても構わないし」
「そうですか! それは楽しそうですね! では、少し早めに向かわせて頂きますね。お仕事がんばってください」
「……うん、ありがとう。がんばるよ」
お城を回らせて頂けるんですって! とても楽しそうです。お城にはすごい部屋がたくさんあるってお兄様たちやお姉様に聞かせてもらっていたんです。早く準備してゆっくり見て回りたいですね~。
「よかったね、アルベルト。お仕事がんばってください、だって」
「勘違いしないで頂戴。リーちゃんはお兄様方やお父様に同じことを毎朝言ってるわ」
癖、みたいなものですよね。
「行ってくるね、アリーシャ。アリーシャが応援してくれたからいつもよりがんばれるよ!」
「それはよかったです。いってらっしゃいませ」
ニコニコ笑いながら部屋を出ていく国王様に、私はペコリと頭を下げました。早く準備しないと!




