ー国王様視点ー
ア、アリーシャが。アリーシャが!
「国王様、そんなお顔をなさらないで。国王様は、国王様なんですよ? この国で一番偉いんです。だからどうか、自信を持って。臣下である私に、そんな風に頼んではいけません。あなたはいつだって前を見て、自身の発言に誇りを持つべきです」
自信を……? でも、きっとアリーシャは嫌なのに?
アリーシャが嫌なら、断ってくれていい。確かに僕は国王だけど、無理強いしてまで望んでないよ。無理にアリーシャを婚約者にしたって、アリーシャは振り向いてくれないよね? きっと僕はずっと国王のままで、アリーシャの好きな人にはなれない。それは僕の望んでることとは全く違う。そんな関係を築くなら、別にアリーシャじゃなくてもいいんだ。でも、そうじゃなくて。僕が望んでるのは、そういうのじゃなくて!
「……国王様、あなたが望むのなら、私に断ることはできません。でも今、あなたは私に答えを求めた。それは、私に対する優しさですか? ……本当に、それは正しいですか? あなたは、上に立つものです。弱味を見せることは、時に必要で、時に下のものに不安を与えます。そんな自信なさげに言われて、相手は気持ちよく了承できるのでしょうか」
でも、でも! アリーシャの本心を教えてくれないと、意味がないんだ……。僕が無理にしたって意味ないんだから。それは、正しくないこと?
……なぁんてはじめは思ったけど。でも、最後の言葉を聞いてなんだか納得した。
「……そっか。そうだよね。ごめんね、アリーシャ。自分の婚約者になるっていう男が頼りなかったらいやだよね。……うん。もう大丈夫。アリーシャがそんな風にびしって言ってくれると思ってなかったよ」
ほんとに、思ってなかった。アリーシャって案外強い子なのかもね。すごく驚いた。アリーシャには驚かされてばっかりだ!
国王の婚約者になるんだから、少し強いほうがいいのかもしれないけど……でも、僕はアリーシャを守りたいんだ。きっとアリーシャなら僕の隣に立って生きてくれるだろうね。それはすごくうれしいんだけど、それじゃアリーシャが危ないから。僕がアリーシャを守らないと! まずはアリーシャに僕もちゃんとアリーシャを守れるんだよって証明しないとね。
「ねえ、アリーシャ。もう一度言わせてくれる? 絶対に君を大切にするって誓うから。だから、僕と婚約してください」
何よりも、誰やりも大切にするって誓うよ。アリーシャのことは、きっとまだまだ好きになれるから。もっともっと、近くにいたくなると思うから。
「……はい、国王様の役に立てるよう、私もがんばりますね」
そうやって笑ってくれるアリーシャを、どうしてだかすごくいとおしく思えるから!




