デュークお兄様の大切なもの
私は別に来ていただいても構わないのですが。だって、みなさんお仕事を熱心にしている、っていうことですよね? 周りに迷惑をかけることはよくありませんが、がんばるのはいいことです。
「……家に来るのは構わないわ。リーちゃんもデビューしたんだし、今の流行りや人との接し方を学ぶのはいいことだもの。でも……そんなこと、どうでもいいのよ。今すべきことは、違うでしょう? ねえ、そうよね?」
「ル、ルリリア。そんなに怒らないでよ……わかってるから」
「なら、どうしてここにいるのかしら。他に優先すべきことはまだまだあったはずよ」
あら……お姉様が再びお怒りのようです。いったい国王様は何をしたのでしょうか。
それに、他に優先すべきこととは? 突然のお客様をもてなし、わざわざ私にご報告にいらしてくださったのに、すべきことなんてあるのですか? 私には想像もできませんが、頭の回転が早い国王様はとっくに気づいているご様子。さすがですねぇ。
影さんに至っては興味を無くしたのか、部屋の中を物色し始めています……。目についた物を手にとってはしげしげと眺めて……あ、また別のものを。さっきのものを触っていた時より楽しそうです。今度のはお気に召したようですね! あれは……ああ、確か。
ちょっと影さんが心配なので見に行きます。お姉様も怒っていますし、少しここは居づらいのでちょうどよかったですね。
「影さん。それ、触らないほうがいいですよ」
「え? どうして?」
「だってそれは……」
言っても、いいのでしょうか。う~ん、知らないほうが良いかもしれません。幸いにもデュークお兄様はお仕事で今はいませんし、触っていても今はばれませんしね。……まあ、何故か後々ばれて怒られるのですが。
「………理由は聞かないほうがいいと思います。とりあえず、もとの場所にこっそりと戻しておくのがおすすめですよ」
「気になるから言ってくれていいよ? それにこれ……ロケットペンダントだよね。中見てもいい?」
「見ないほうがいいです。お兄様が怒っちゃいます!」
そう、影さんが持っていたのはデュークお兄様のロケットペンダント。中に何が入っているのかしりませんが、ヒューお兄様が触ろうとしてとても怒っている場面を見てしまいました……。まさか、あのデュークお兄様がお怒りになるなんて……!
とっても怖かったんです!
「お兄様……ってどっちの?」
「デュークお兄様です」
「あ、それはやめといたほうがいいかも。忠告ありがと」
「いえ、怒ったお兄様は怖いので」
「知ってるよ。一度だけ見たことあるんだよね」
「まあ、本当ですか?! 人前で怒るなんてめずらしいこともあるんですねぇ」
あの真面目なお兄様が! 影さんには心を許しているということでしょうかね。




